Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

東海大の冒険



いやはや強かった。
黒鷲旗4日目、一番盛り上がった東海大学-JT戦。明らかに東海大学の方が横綱バレーだった。まさに勝負に勝って、試合で負けた、そんなゲーム。試合終了後の会場の大きな拍手がそれを物語っていた。


黒鷲旗予選リーグでサントリーをぎりぎりまで苦しめ、翌日、プレミア4強である豊田合成を圧倒した東海大学は今日、決勝トーナメントに進出し、JTと対戦した。
第1セット、東海大学の為したバレーはおそらく国内のどのチーム、もちろんパナソニックでも全日本でさえもかなわないだろう。素晴らしいサーブを連発、5本のサービスエースを産み出し、JTのレシーバー陣を粉砕した。JTはおそらく一本のクイックも使うことが出来なかったはずだ。八子、小澤という好調であれば日本でトップ10のサーバーに入るであろう二人が、しかもチャレンジャーという気持ちで全力でサーブを打つのだから、たまったものではない。
しかし、やはりそこは大学生。うまくいきすぎたからなのか、第2セットは少々守りに入ってしまった感が伺えた。JTもセッターを替え、ベテラン徳元選手を入れ、何とかバレーを落ち着かせることができた。
第2セットはJTがとるも、第3セットまた息を吹き返した。がっぷり四つに組む展開でも東海は臆さない。大矢はコートを駆けまわり、深津(弟)は矛盾のない決断を続けた。この大会からスタメンに入っている阿部も要所で速いクイックを見せ、安永は圧倒的な高さで時にはクイックでゴメスを吹き飛ばし、1枚で彼を止めた。星野は抜群の守備力と安定感でチームを支え、小澤は力強いスパイクを打ち続けた。そして八子がチームをまとめ、彼のサーブ、ブロック、スパイクすべてにJTは手を焼いた。
今日の東海大であれば、疲労に耐えうるという仮定なら、プレミアリーグで4強に入る実力は間違いなくある。この大会、東海のストロングポイントは「臆さない」ことであった。相手のブロックを恐れず、しかも通過点を高く保ち、質の高いスパイクを打ち続けた。
東海は切り替えの早さも非常に良かった。点を取られたあとでも次の隊形を作る時間が非常に早い。実に基本的なことだが、しっかり出来るチームは多くはない。例年、プレミアと当たる大学生は一点、一点を引きずり、それが蓄積し、崩壊していく。そんなことが今年の東海大学にはまったくないのだ。


3,4セットとも先にセットポイントを取ったのは東海だった。しかし、セットは獲れなかった。勝っていたのはまさにJTのプレミアチームとしての意地とプライドだけだった。勝負どころでの経験、それは選手の成長にとってなにものにも代え難いものだ。これは東海の選手たちにとって、きっと貴重な財産になるはずだ。
八子率いるこの若者たちは、この大阪での冒険を非常に楽しんでいるようだった。そしてその冒険の終点として、間違いなく一番高いところを目指していた。「優勝を狙っています」、もしそう言われても笑う余地なんか全くないバレーボールを彼らは見せてくれた。まだ春なのに、まるでこのメンバーで戦うことが名残惜しい、だからこの刹那に全てをかけたい。それくらい彼らのバレーボールには1点1点の重みがあった。それがきっと大学生の強さなんだろう。


黒鷲旗ベスト8。冒険の結末は彼らにとって、まだもの足りないものだったはずである。コートをあとにする彼らの後ろ姿からは肩の震えが見て取れた。まだまだ1年は始まったばかり。年末、彼らの東京の冒険に期待したい。