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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

(書評)コートの中のイタリア 佐藤直司著



コートの中のイタリア (コシーナ新書)

コートの中のイタリア (コシーナ新書)

今日は趣向を変えて、ちょっと書評を。
本書は3ヶ月程度前の出版だが、タイトル等に「バレーボール」の文字がないので、最近まで存在を知らなかった。バレーボール関係の副題をつけたら、結構売れるだろうに。あえて副題をつけるなら〜イタリアバレーボールの歴史と成り立ち〜といったところか。あくまでバレーボールを枕にイタリアのスポーツ社会を描きたかったから、あえて副題はつけなかったのかもしれない。


目次には「イタリア人とバレーボール」「イタリアバレーの経営的側面」「ファシズムとバレーボール」「バレー王国への旅」などバレーマニアが興味をそそるコンテンツが満載である。
なお目次を含め、本書の一部は出版社のwebサイトで読むことが出来る。
コートの中のイタリア :: ActiBook


バレー界のプロリーグでは、一番成功しているといえるイタリアが成功した理由を「スポーツエコノミスト」なる著者が現地取材を含めた入念なリサーチから、分析している。歴史的な経緯のみならず、エコノミストらしく詳細な数値をもとに行う分析は目からウロコの新事実もあり、非常に勉強になった。
一つあげるなら、イタリアプロチームの収入源。イタリアでは入場料収入というのはそれほど大きいウェイトを占めないという。屋外スポーツに比べれば観客動員は遠く及ばないし、チケットもそれほど高いものではない。収入のメインとなるのはやはりスポンサーからの収入だ。しかしながら、イタリアのチームに日本人の誰もが知っている企業というのはほとんどない。日本のプレミアリーグの多くが大企業のチームであるのとは、対象的であり、このあたりの比較も詳細な数字を元に見てみるとおもしろい。


ネタバレになるが、筆者はイタリアがプロリーグとして成功した理由をもとに、日本のバレーボール界がプロ化に踏み切らなかったのは妥当な決断であったと述べる(そこまで深い考えに基づいた決断だったとは思わないが)。詳細は本書を読んでいただきたいと思うが、たしかにプロ化自体はファンにとっていいことづくめである。しかしながら、ビッグマネーが動かないプロリーグの選手が、金銭面で恵まれているとは言い難い。チーム数拡大の一途をたどる好調なbjリーグでも一般的なサラリーマンと同等、もしくはそれ以下の年収の選手がほとんどだと聞く。このあたりは、バレーボールのみならず多くの屋内団体競技にとって課題となるだろう。
日本のスポーツ界にとって企業・学校から地域へのシフトは、今後間違いなく必要に迫られる問題である。今すぐは無理なことだが、このイタリアのバレーボールにおける歴史、情熱を知ることは無益ではないだろう。


やはりネット上では知り得ない歴史や現地の空気感はまさに私の知りたかったことであり、もう少しトップチームの経営に踏み込んで欲しいところはあったものの、まさにこういう本が出たらいいのに、を体現した本でもあった。欲を言えば、これのブラジル版も読みたいところである。