Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

日本初?70年前のバレーボール技術書



近代デジタルライブラリー | 国立国会図書館というサイトがあります。
国立国会図書館が所蔵する明治・大正・昭和前期の図書が見られるデータベースで、早い話スゲー昔の本が無料で読めるわけです。
で、バレーボール関係のものを探したら、昭和17年刊行の関東大学排球聯盟編『排球の技術』という本がありました。で、古さもあいまってなかなか面白い本だったので紹介します。
著作権も切れていますから、サイトで誰でも全文読むことができます。


http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1125853


昭和17年といえば、1942年ですからちょうど今から70年前ですね。この本が本当に日本初と言っていいかは微妙なところですが、序文中にあるように本格的なものとしては、日本初といってもいいのでしょう。


巻末には壹圓六拾餞(1円60銭)というこの本の価格が印刷されていました。想像を絶しますね。ちょっと気になったので、現在の価値でいくらくらいかということを調べてみました。大卒銀行員初任給70〜75円という時代みたいなので、だいたい当時と比べて今の貨幣価値は3000倍といったところでしょうか。とすると、当時1円60銭というのは現在の価値で5000円近いものでしょうか。うーん、やはりなかなかしますね。


70年前ですから、当然と言っちゃ当然ですが、今とは使用する用語が違います。まず、この時代には「スパイク」「アタック」という用語はありません。なので一般的には「キル」が使用されています。なので現代でいうスパイカーに代わり、キラーという表現が本書の中では多く使われています。早キルなんて表現も時代を感じますね。
また、ブロックとは言わず、この時代では「ストツプ」という表現が使われています。「ブロッカー」は「ストツパー」、「ブロックアウト」は「ストップアウト」という具合。
この用語は後々どう進化していくかを考えて読むのもまた一興。


まだまだ9人制の時代なので、直接的に参考になる部分はそんなに多くないのでしょうが、まだまだ国際大会も開催されておらず、固定概念といったものが存在しないこの時代、今見ても結構新鮮と思う記述も多々あります。

超スピード化されたトスがネツト上を直線的に往復し、攻撃者は全部一緒にヂヤンプ、面して各攻撃者の前にストツパーのない者が、キルなり、タツチなりをすることこそ斯技の理想ではあるまいか。
86p 関東大学排球聯盟編『排球の技術』 1942

まぁ、表現的に若干怪しいとはいえ、現代のシンクロ攻撃に通じるところがありますね。時間差の概念が出てくる前にはちゃんとこういう発想があったのですわな。


とか、時代柄か結構、むちゃくちゃなことを言ってることも。

前衛右をポヂシヨンとする者には左手のプレイが絶對に必要なことで、右手のみのプレーでは攻撃の威力は全く自滅する。眞に左手のプレーを完成する爲めには、プレー中は勿論の事、日常の茶飯事に至るまで左手を使用する熱心さを以つてすれば、シーズンの終には堂々両手ききのプレーヤーとなるであらうことを断言する。
87p 関東大学排球聯盟編『排球の技術』 1942


結構指導哲学的なことも書かれていて、意外と読み物としても面白いかもしれません。
まだまだ全部読んだわけはないですが、時おりの暇つぶしにはなりそうです。