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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

ステファンに捧ぐうた~ブエビッチ、セリエA決勝へ~



以前、スウェーデンのグスタフソンの記事を書いたとき、グスタフソンは私の好きな選手ベスト3に入る、と書いたが、ゴラン・ブエビッチもその中の一人だ。


ユーゴスラビアがシドニー五輪を獲ったときのアウトサイドヒッター。ブエビッチとグルビッチ兄のレフト対角は、長らくの間、私を興奮させた。しかしながら、モンテネグロ人であるため、モンテネグロがセルビア・モンテネグロから独立して以降は、彼のプレーを国際舞台で見ることは出来なくなってしまった。


ブエビッチはいかにも"職人"という響きの似合うプレーヤーで、その安定したサーブレシーブ、テクニックあふれるアタック、コート上の多くを見通しているプレーはいつも見ていて惚れ惚れした。
感情をむき出しにするグルビッチ兄とは対照的に、クールにプレーをこなす姿がもうね、かっこよかったんですわ。
以前バレーボール・ナイスプレーベスト5でも紹介した下記リンクのプレーなんかしびれちゃうよ。
http://www.fivb.org/EN/Technical/WorldLeague/2005/Video/WL%202005%20SCG%20138%20high.wmv


ビデオは1998年世界選手権の決勝。ミリュコビッチの登場前は、オポで中型のバテズがサーブレシーブの一翼も担っているため、両サイドの攻撃の負担も大きく、ブエビッチもガンガン打っている。


彼は今年、41歳になるが未だにイタリアセリエAで現役を続けている。
往時には彼のトレードマークともいえたその厚い胸板もだいぶ薄くなったし、そのフィジカルはだいぶ落ちたものの、そのテクニック、サーブレシーブは健在で、ミティッチ、アタナシエビッチと若手の多いペルージャの重要な存在となっている。


今年のペルージャの開幕戦は、クネオでのアウェーマッチだった。劇的な開幕勝利を収めたその帰り道、ブエビッチに待っていたのは、息子の死の知らせだった。心臓麻痺だったそうだ。5歳になるステファンにはもともと心臓に疾患があったそうだが、信じられないことであったことに違いはない。


その6日後、ホームでのモデナ戦にブエビッチは出場した。
試合前には黙祷がささげられ、タイムアウトやセット間にはステファンが好きだったJovanottiのIl Più Grande Spettacolo Dopo Il Big Bang(冒頭の動画)がかけられた。
ステファンはなによりも父がプレーする姿を見るのが好きだったから出場したと、この試合で勝利を収めたブエビッチは述べている。
Vujevic più forte del dolore In campo 6 giorni dopo la morte del figlio - Quotidiano Net - Sport



ちなみにこの週に行われたすべてのイタリアリーグの試合で、ステファン・ブエビッチに対する黙祷がささげられた。
Stephan Vujevic - YouTube
20年近くイタリアでプレーしているブエビッチが多くのファンから愛されている証左でもあると思う。


そんなブエビッチのペルージャが昨夜、セリエAの準決勝第5戦でピアツェンツァを破って決勝進出を決めた。下馬評から言えば、かなりの大番狂わせ。やはり決勝は大方、マチェラータとピアツェンツァになるものだと思われていた。
3戦先勝方式で第5戦までもつれ、そのうち3試合がフルセットというかなりギリギリな試合。しかも最終戦はピアツェンツァのホームでの勝利と、かなり奇跡的な展開。


20年近いのイタリアのキャリアでブエビッチが決勝にいくのは、初めてのこと。
お涙頂戴な話にはしたくないのだが、ステファンが父ゴラン・ブエビッチのプレーを見ることができたらいいなと願うばかりである。
また、おそらくはブエビッチのプレーを見られるのは今回が最後ではないかと思っている。
そんな彼の姿を私も目に焼き付けたいと思う。


そんなセリエA決勝戦の第1戦はあさって24日から。