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Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

そりゃ選手寿命は伸びてるけどさ、という話




ベルリン・リサイクリングバレーの指揮をとるオーストラリア人、マーク・レベデフのブログ、At Home On The Courtは私のブログの目指すべき方向性を示してくれるブログの一つです。やはりうちのブログの真面目な側面では彼のような記事を書けるようになりたいと常々思っている次第です。様々な視点、深い知識、思慮深い考えは見習いたいものです。


さて、そんな彼の記事の中の一つに『歴史上もっともすごい試合』という記事があります。彼はそのうちの一つに1996年アトランタ五輪の決勝、オランダ-イタリアを挙げ、甲乙つけがたしとして(まだあるんだろうけど)、1985年ワールドカップのアメリカ-ソ連を挙げています。
Greatest Volleyball Match Of All Time – Part Two | At Home On The Court



1985 Volleyball World Cup - USA v USSR - YouTube
1985年のワールドカップは体調的な理由で帰国したマーヴ・ダンフィーに代わり、ゲイリー・サトウがアメリカを指揮したことでも有名な大会ですね。アメリカがキライ、ティモンズらを擁し、全勝優勝を飾った大会です。


記事では、ビデオをもとにデータバレーで統計を起こしています。それが下記リンク(pdf)。ビデオの関係で1、2セットと5セット目しか見ることができないにもかかわらず、その数字は現在のバレーボールではとても目にすることができない数字が並んでいます。
この時点で両チーム併せて370本ものアタック、272ものサーブを打っています。選手のアタック打数にほとんど偏りがないのもスゴイですね。
http://markleb1.files.wordpress.com/2014/04/usa-urs-match-report.pdf
3セット目、4セット目を合わせれば、点数を考えてもこの数字の大体1.6倍から1.8倍、下手したら2倍近い数字にはなっているでしょう。


例えば、今季のVプレミアリーグで一番点数的に長引いた試合を探してみると、とりあえず目についたのが1レグJT-パナの計242点という試合。すべてのセットが2点差というかなり内容の濃い試合ですね。この試合の両チームのアタックは343本。
http://www.vleague.or.jp/direct/vleague_dataroom/printb/id=22154
アメリカ-ソ連はおよそ3セットで、すでにこれ以上、お互いにサーブを打ち合うゲームをしていたわけです。


じゃあ、そのアメリカ-ソ連がトータルとしたらどれくらいの本数になったのかというのは推測することしかできないわけですが、例として、古くまで記録の残っているイタリアセリエAの記録を参照してみます。セリエAのサイトでは過去、最も長引いた試合も統計トリビアとしてランキングで記録されているので、こういうとき便利ですね。
まずはラリーポイント制でもっとも長引いたのが、2002年のクネオ-トレビソ。
http://www.legavolley.it/TabellinoGara.asp?IdGara=3220
クネオにはオムルチェン(たぶんこのころはまだミドル)、サムエルボ、カントルと日本にきたプレーヤーがたくさんいますね。この試合の合計点数が275点。2セット目の52-54が効いてますね。この試合で両チームのアタック本数合計が309本。


で、サイドアウト制時代で一番長引いた試合を見てみると、1989のミラノ-ファルコナーラの試合。
http://www.legavolley.it/TabellinoGara.asp?IdGara=284
ミラノは過去サントリーにもいたことのあるズラタノフ父、ディミタル・ズラタノフが指揮をとっています。選手で知っているのはドヴォラックくらいでしょうか。
一方のファルコナーラの方もほとんど知らないのですが、ビーチで名を馳せたティム・ホブランドとマッシャレッリとほとんど出ていないグラビーナくらいしか名前を知りません。
この試合のサーブ合計が380本、スパイク合計はなんと494本。もう少しで500本…。ボノーラ選手のレセプション109本…。
サーブの本数をベースにしてみると、ラリーポイントで一番長引いた試合よりも約1.4倍長く試合をしているわけです。まぁ、簡単に1セットを50点として考えてみると、ラリーポイント換算で約7.6セットもやっている計算です。


この二つを比べたときに一番違うのがサーブの質でしょう。ラリーポイント制のクネオ-トレビソ戦の試合の両チームのサーブミスの合計が59本。サイドアウト制のミラノ-ファルコナーラ戦のサーブミスはわずか15本。約1.4倍長く試合しているのに、サーブミスの数は1/3以下。サーブミスで終わることも少ないので、身体的な負担はかなり大きかったことでしょう。
まぁ、サーブミス59本ってのは出すぎではあるんですが。


じゃあ日本のサイドアウト制ではどうだったかというと、当然サイドアウト制時の統計はweb上ではほとんど見つからないので、古い月バレをちょっと引っ張り出してみました。
時期柄というのもありますが、ちょうど20年前の黒鷲旗の決勝がすこし拮抗したフルセットになっていたので、参照してみます。

黒鷲旗第43回全日本男女選手権大会

1994年4月30日~5月5日
決勝NEC-富士フィルム
NEC 3(12-15、15-5、13-15、16-14、15-13)2 富士フィルム

NEC ス打 ス点 ス権 バ打 バ点 バ権 ブ点 ブ権 サ打 サ点 失点 失権
木原 3 1 1 0 0 0 1 0 36 0 0 1
小林 29 4 12 0 0 0 0 0 17 0 3 1
大槻 35 2 12 0 0 0 8 5 28 0 1 2
泉水 85 13 30 26 3 11 0 0 26 0 2 6
金子 49 5 22 0 0 0 4 0 32 0 2 2
大竹 32 3 15 6 0 4 2 1 31 0 3 1
市川保 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0
細川 4 0 4 0 0 0 0 0 5 0 0 1
29 8 8 0 0 0 0 0 14 0 2 2
諸星 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
チーム 1 1
267 36 104 32 3 15 15 6 193 0 14 17
富士 ス打 ス点 ス権 バ打 バ点 バ権 ブ点 ブ権 サ打 サ点 失点 失権
成田貴 3 1 1 0 0 0 0 0 20 0 0 0
松本 40 3 24 1 1 0 3 2 37 1 0 2
金牧 68 6 24 19 0 6 4 0 29 0 4 6
青山 37 4 11 2 1 0 2 0 24 0 4 2
38 5 19 1 0 0 5 1 28 1 2 0
蔭山 51 5 20 10 0 4 4 0 25 0 4 1
清水 1 1 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0
鬼嶋 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0
米山 4 0 1 0 0 0 1 0 14 0 0 1
熊田 5 1 2 0 0 0 1 0 2 0 0 0
チーム 6 0
247 26 102 33 2 10 20 3 184 2 20 12

月刊バレーボール6月号 日本文化出版 1994年

泉水さん85本も打ってるー。
この試合のサーブ合計が377本、アタック合計が514本!500越えてる!
さっきのアメリカ-ソ連の試合の統計でもそうなんですが、やはりサーブがそれほど強くないので(それだけが理由かわかりませんが)、全体的に打数に偏りが少ないんですよね。
ミドルが平均して35~40本の打数があるなんて今では信じられません。
しかも、これが何日も連戦している黒鷲旗の最終日と考えたら、簡単には言いたくはないのですが、昔の人はすごかったなぁと言わざるを得ません。


どこかで書いたかもしれませんが、当時は30歳までプレーするのは稀だったと思います。
30以上といえばだいたいコーチ兼の肩書がついていたり、背番号も大きくなって、たまにしか出てこないとかそういう感じが多かったです。
そう考えると、今どこのチームにも30歳以上のプレーヤーはいるし、マルコスは40だし、メロも37だしまぁ、全体的に選手寿命が伸びたのかなぁとは思います。


今年のチャンピオンズリーグでは38歳のテチューヒンがMVPを獲り、セリエA準決勝では40歳のパピ、38歳のズラタノフ、41歳のブエビッチの対戦を見ることができ、39歳のセルジオにも代表復帰の可能性が報じられています。
10 Of The World’s Oldest Players (Still Playing) :: Volleyball-Movies.net


とはいえ、彼らがそのような年齢までプレーできるのは、自分の身体ひとつを商売道具にしてプレーする、プロの世界の住人だからに他なりません。
ほとんどの選手が学校を卒業後、1チームで選手生涯を終えるという日本のシステムでは、やはり会社員であるという観点から能力以外の理由、「そろそろ会社の仕事を覚えさせないと」「同じポジションの若手を獲得するから」といった理由でまだまだできそうなのにという選手が引退という道を選ばざるを得ないことが少なくありません。
そう考えると荻野氏あたりはかなり特殊な例でしょう。
サイドアウト制の頃には、選手の体力から言ってもこのシステムはそれなりにうまく回ったのかもしれませんが、やはり現在のラリーポイント制で考えると、すこし選手余剰が起きているような気がします。


今の日本のシステムを真っ向から否定することはできないのですが、他の国のリーグのように30歳を過ぎてから成長する選手、40歳でもまだまだ一線級で頑張る選手たちを日本ではほとんど見ることができないという事実は、少し私を悲しくさせます。