読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

イランに見る楽しいプレーの強さ




2014世界選手権inポーランド、各グループ4戦を終えた。
特にプールDは予想通りの混戦プラス、プエルトリコのイタリア撃破も相まって、フランス、イラン以外のすべてのチームに勝ち上がり、そして敗退の可能性がある非常に難しい状況になった。


そもそもこの時点で確定が出るとしても、アメリカ、イタリアあたりだろうと思っていたのだが、両チームともなかなか苦戦が続いている。一方フランスは今大会ディフェンスの精度が非常に高く、上がったボールをルジエと両アウトサイドがことごとく点にできている。
そして、今日のお題のイラン。そのフランスには破れてしまったものの、イタリア、アメリカ戦を見た感想を述べたいと思う。


イランのバレーボールは見ていて、とても楽しい。それは、イランの選手たちがとても自由だからだ。


サイドアウト制からラリーポイント制に変わった昨今、すべてのプレーが点に直結するため、ミスは極力減らすことが求められ、あらゆるプレーに精度が求められている。
バレーボールはより洗練されてきている。しかしながら、選手の一瞬のひらめきや、創造力豊かなプレーというのが、少なくなっているとも感じる。
洗練されたが故に、点数を取るためのメソッドが確立され、それをどれだけ精確に、どれだけ丹念に、どれだけ長い時間行えたかが、勝負の分かれ目になるゲームが非常に増えてきている。リスクのあるプレーは排除され、点数をとれる確率の高いプレーが選択される。
ゾルジも、近代のプレーヤーはより「メカニック」だと述べ、変わりにプレーの美しさを失ってはいるのではないかと警鐘を鳴らす。
Andrea Zorzi: Speed is at the heart of modern volleyball | FIVB - Press release


要するにバレーボールが手本をいかに上手くなぞるか、というスポーツになってしまっているのではないかということだ。
これ自体に対して、批評をするつもりはない。バレーボールの当然の進化の流れであるし、基本的にはほかのスポーツでも同様だろう。


そこでイランである。もちろんイランが全部が全部、自由にプレーしているというわけではない。バレーボールがチームスポーツである以上、どれだけチームの約束事を徹底できているかは勝敗の重要なファクターであるし、イランが奇想天外なプレーばかりしているというわけでなく、あくまでバランスの話である。この辺のニュアンスはうまく言葉で伝えられないのだが、過去の記事なんかも読んでいただけるとなんとなくは理解していただけるかもしれない。
The end justifies the means - Stay Foolish
Beyond Imagination - Stay Foolish


メソッドが確立されすぎているが故に、今、意外なプレーは意外なほどよく決まると思う。メソッドにこだわるチームほど意外なプレーを想定していないものだ。


たとえば、イタリア戦4セット目9-9、セッターのマルーフがファーストボールをディグすると、オポジットのガフールは2段トスをセッターに上げた。セッターも意図を感じられず、トスも精度が低かったため、チャンスボールを相手に与えてしまったが、相手もほとんど反応できていないのも事実。このプレー自体を称賛したいわけでなく、この発想が浮かぶ自由さに驚いた。
そして、そのラリーを落としたときの落胆の仕方(笑)。なんでそんなプレーをというのもあるのだろうし、なんというのだろう、本当に戦っている感じがするのだ。


同じく4セット目16-13、同じくセッターがとったボールをバックセンターのガエミがトスに行くのだが、スパイクのフォームをフェイントに入れている。
今大会、ガエミが2段トスに行く際は、いつもこのフェイクを入れている。もちろんタイミングが合えば、打ちにいくこともあるだろう。



彼らから感じるのは、バレーボールをとても楽しんでいるということだ。ミスをしない最適解もわかっていつつ、瞬時のひらめきでよりおもしろいプレーを選択できる。
マシンのようにしなければいけないことをこなすだけでなく、瞬間瞬間でプレーを創造できる。
これを感じたのは、ジバ、リカルド、ダンテ、セルジオらの2000年代中盤のブラジル以来である。


しかしながら、彼らがあのブラジルくらい強くなれるかというのは、また別の話である。まだまだ詰めの甘い部分はあるし、荒いときはとことん荒いし。
ただ、マルーフは現在世界トップ3のセッターだろうし、ムーサビはムセルスキーとシモンを除いた人間界では世界ベスト3のミドルであることに間違いはないだろう。


彼らがどこまで行くことができるのか、注目していきたい。