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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

新FIVBランキングの与える影響



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今年からFIVBのランキング算出方法が変更される。
旧ランキングでは、主要大会の順位に応じてのみポイントが付与されたため、大きな大会に開催国枠で参加するだけでも、ある程度のポイントが獲得できたり、ヨーロッパなどレベルの高い地域ではポイントが稼ぎづらい、結局相対的な強さが反映されていないといった問題があった。

新方式のポイント

  • ほぼすべての大会の1試合1試合がランキングに反映される。
  • 試合結果(セットカウント)もランキングに反映される。
  • 試合前の結果期待値によって、付与されるランキングポイントが変わる。
    • ランキングが高いチームが低いチームに勝ってもランキング変動は小さいが、ランキングが低いチームが高いチームに勝つと変動が大きい。

詳しくは以下URLから(PDF)。
https://www.fivb.com/-/media/2020/fivb-corporate/volleyball/world-ranking/fivb-world-ranking---how-it-works.pdf?la=en

実例

FIVBサイトで挙げられている例から、解説する。
https://www.fivb.com/-/media/2020/fivb-corporate/volleyball/world-ranking/fivb-world-ranking---examples.pdf?la=en


この例では、仮に世界選手権で、ランク1位のブラジルとランク11位の日本が対戦した場合のランキングポイントの変動を挙げている。

ランキング1位ブラジル ランキングポイント415
ランキング11位日本 ランキングポイント192

試合前の2チームのランキングポイントの差から、この試合における結果の期待値が算出される。
以下はすべてブラジルから見た結果。

3-0 76.5%
3-1 15.2%
3-2 4.5%
2-3 2.2%
1-3 1.2%
0-3 0.2%

ずいぶん舐められたものだなという気もするわけだが、これはあくまでランキングポイントに基づいたもの。
もし2チームのランキングポイントがより近いものであれば、この期待値はもっと平均的になる。
この期待値に基づいて、実際の結果によりポイントが付与される。つまり期待された結果より良い結果を出せば、たくさんポイントがもらえるという仕組みだ。

実際の結果が

ブラジルが3-0だった場合

ブラジル+1.35、日本-1.35

ブラジルが3-1

ブラジル+0.01、日本-0.01

ブラジルが3-2

ブラジル+0.01、日本-0.01
3-1のケースとは数値が変わらない。戦前の期待値から言えば日本が善戦した結果なわけだが、このランキングでは勝ったチームのポイントがマイナスになること、負けたチームのポイントがプラスになることはない。

日本が3-2

ブラジル-15.52、日本+15.52
ブラジル3-2とたかが1セットとったかとらないかの違いしかないのに、大変動である。

日本が3-1

ブラジル-18.34、日本+18.34

日本が3-0

ブラジル-21.15、日本+21.15
これは日本が一気に2つランクアップできるくらいの上り幅である。

これはあくまで世界選手権という想定である。大きな大会ほどポイントが上下する幅が大きい(世界選手権は係数45)。オリンピックが係数50でネーションズリーグ40というのはネーションズリーグ価値高すぎだろ、というのはある。
結局のところ、この新ランキングはネーションズリーグの価値を高めたいFIVBの意図が透けて見える。

メリット

  • 旧ランキングより、実力に即している。
    • 単純に良いことだと思う。これまで旧ランクに対しては散々文句言ってきたし、中継なんかで紹介されてもなんかもやっとしていたし。
  • 急に強くなった国などでも、ランキングを上げやすい。

デメリット

  • いわゆる捨て試合がやりにくい。
  • スター選手の疲労が心配?
    • すべての試合が対象となるため、大会中に主力を休ませたいゲームやネーションズリーグで若手中心で試すといったことがやりにくくはなるだろう。ただFIVB的にはむしろこれが望む結果であろう。Bチームで臨む試合はエンターテイメントという部分で魅力に欠けるというのは同意できる。ただ年間の日程がひっ迫しているこの状況でスター選手はいつ休めばよいというのだろう。このシステムを続けていくのであれば、年間日程、連戦が続く世界大会の運営方式など考えなければいけない部分は多い。日本でもアジアカップなどは今はU23で行っているが、ランキングに関わるとなると、もちろんフルチームが行く必要はないが、もう少し人選を考える余地が出てくるのかもしれない。

この新方式を用いたうえでの現在のランキングは以下リンク。
www.instagram.com

現在のランキングは昨年、2019年1月1日にさかのぼり、FIVB加盟すべてのナショナルチームに100点を付与し、その後この算出方法で1年経過した結果である。
ヨーロッパ選手権優勝したのにセルビアそこかよというのはあるが、それはやはりネーションズリーグで若手主体でいって、結構負け越したから。
たかがランキングとはいえ、このランキングに応じて、オリンピックの組み分けが決まったり(2020は旧ランクで決定)、世界選手権のプールが決まったりするので、重要なものである。
ランキングを優位にするためにネーションズリーグに主力を出していくのか、ランキングには少し目をつぶり、今後のために若手をしっかりそこで育てていくのか、特に上位国はそのあたりのジレンマに悩まされることになるだろう。