またシューズなんぞ下らんことを、と怒られそうなので。
イラン戦を見ながら書いてます。数試合見ることができてませんが、今日で予選ラウンドも終わるので、ざっと。
もちろんサーブで攻めるだとか、トータルディフェンスだとか、4枚攻撃だとかはあくまで前提の話として、すっとばしてます。
ショートサーブのシステム化
個人のひらめきというよりは、戦術としてショートサーブを標準装備しているチーム、選手が増えた。
もちろん強サーブは健在で、ショートサーブとの使い分けによって、レシーバーの位置を不安定にさせ、更にサーブの効果を高めている。
ショートサーブで相手ミドルやパイプ、前衛のサイドを消して、ブロックと連動してディフェンスできれば、強サーブで崩すのと変わらないわけで、詰まるところサーブの目的というのは、相手の攻撃枚数を減らすことなのだ。
ビッグサーブが大事とはいっても、ミスとはどこかで折り合いをつけなければならないわけで、リスクを減らしつつ、なおかつ効果を高めるショートサーブが増えてきているのだと思う。増えたとは言っても10本中1~2本の話であるが、それがあるかないかで、レシーバーのプレッシャーは大きく変わる。
強サーブしか打てないサーバーは(それほど)怖くない時代になるかもしれない。ただ、その強サーブもコートの隅を的確に狙ったりと、進化をし続けている。
オリンピックは使える動画がないので、VNLのものになるが…
VIDEO youtu.be
フローター系もボールが現行のものに変わったことで、変化量が減ったのか、強めのフローターよりはいわゆるハイブリッドと呼ばれるスピン系のサーブを打つ選手が増えた、というのが2019年あたりの流れだが、同じくショートサーブとの組み合わせで前後に揺さぶる傾向は高まっており、今後ますます強くなっていくだろうと考えられる。
ミドルのオフェンス定位置への早動き
下の動画のビエニエクの動き
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これはショートサーブのシステム化とおそらくは関係がある。サイドアウト局面でミドルブロッカー がサイドラインよりにいなければならないローテ(特にS6で見られるがS5,4,2でやるチームもいた)で、サーブが打たれると同時に(実際のところ、サーブの打たれる前)にミドルがコート中央に移動するチームが増えた(日本もやってた)。つまりサイドアウト局面でミドルがライト側からの助走をするチームが減っている(ブラジルなんかあえてライト側に移動することもあるが)。
これはレセプションがネットから離れてもミドルを使いやすくする意図と、ショートサーブからパイプを守る意図が考えられる。後衛のサイドの選手にショートサーブを打って、パイプを消し、あわよくばミドルも潰すというサーブも増えてきており、それに対応する動きだと考えられる。
後段でミドルが高火力化している話をするが、ショートサーブで簡単に乱されるような不器用なミドルも淘汰されるだろうし、USAのスミスのような器用なミドルもそのような展開になれば、重宝されるだろう。
ミドルの高火力化と「幅」の活用
サーブも含めたミドルの高火力化傾向は年々強まっている。ブロックはいいんだけど…、なんてミドルはまずいなくなった。簡単に打ってしまったサーブはミドルで簡単にサイドアウトされてしまう。
ルーカス、ホルト、ソレなんかは相変わらずだが、イタリアにガラッシが入ったのはその攻撃力とジャンプサーブを買われてのものだろうし、フランスのシエニエゼ、アルゼンチンのロセルなど得点力の高いミドルが台頭してきている。日本が世界の強豪と渡り合えているのも、ミドルがしっかり点を取れているという要因を無視することはできないだろう。
今大会、その高火力化を後押ししているのが、ミドルの攻撃の進化である。ジャンプ位置と攻撃位置を左右にずらす、幅を使った攻撃が多くのチームで見られるようになった。もともとアルゼンチンのミドル勢の十八番であるし、日本でも旧来(昭和ね)中型ミドルの生命線であったのだが、やはり今年のチャンピオンズリーグ におけるザクサの優勝が大きく影響していると考えられる。いい選手が揃ってはいるが、イタリア、ロシアのトップチームと比べれば少し見劣りするザクサがそのトップチームをなぎ倒していった今年のチャンピオンズリーグ は、注目するべき点が非常に多い(準々決勝2試合、準決勝2試合、決勝1試合は絶対見るべき)。中でもミドルのコハノフスキとスミスがトニウッティとともに繰り出すこの幅のある攻撃は相当にインパク トがあった。
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スロットをずらすのでヘルプブロックも届かないし、ミドルにの動きに釣られる分、サイド、パイプのケアにも遅れる。これが決まりだすと、普通のアプローチのクイックも簡単に決まりだす。
VNLあたりから全体的にミドルの幅を使った攻撃は増えて来ており、今後ミドルの必修科目になるやもしれない。
オポのマルチロール化とサイドの高火力化
もちろんもともとザイツェフだとかアンダーソンだとかミハイロフだとかクレクだとか、サイドのできる選手がオポに入ってレセプションに参加していたのだが、強サーブに対して、オポジット も参加しての4枚レシーブはいわゆる普通のオポジット でも標準的になってきた(S1、S5、S4のみの話だが)。サイド並みのパス力がなくても、コートの端1mを守ってくれるだけで、他のレシーバーの負担は格段に減る。
ただ攻撃力が高い、というだけのオポジット は図抜けていれば話は別だが、トップの舞台からは淘汰されていくだろう。
逆にアウトサイドヒッターの攻撃力というのは年々上がっているような印象を受ける。オポジット とは逆に、守れるだけという選手というのはほとんどスタメンとしては使われていない。中でもレオン、レアル、クリューカ、サレヒ、ミケレットなどは時代が違えばオポジット をしていてもおかしくはない。
プッシュ系は減る傾向?
これは短いスパンの話であるが、この大会かなりプッシュ系に対する判定が辛(から)いように思う。プッシュのほぼ3分の1はキャッチボールの反則を取られている印象。この判定が世界的にベースになっていくであろうから、今後いわゆるフェイント的なソフトタッチは減らないにしても、指の腹で直線的に押し出すような攻撃は減っていくことが示唆される。今年のチャンピオンズリーグ 、VNLと両手プッシュなどもよく見られたのでちょっとオフェンスの形が変わってくるかと思ったのだが。
だからなのかはわからないが、今大会予選ラウンド後半ではサイドのスパイクはブロックの指先を狙うものが多かったように思う。
セッターがファーストタッチ をしたあとは、後衛のサイドの選手がセットに行くことが標準的になってきた。
これはもちろんツーのバックアタック をするためと、フロントゾーンでオーバーハンドが使えることが大きいだろう。
ヌガペトの代名詞となっているが、私が最初にこのプレーを見たのは2014年のワールドリーグのイランのガエミ。もちろん、彼も誰かのプレーを見たのかもしれないが、ベラスコがインベンターという可能性も微レ存。
アウトサイドのオフェンスでトレンドになりそうなものもあるのだが、まだそこまで定着している感じではないので、今後観察していく。
ただやはりトップレベ ルにおいては、強サーブの精度とそれに対してレセプションがどこまで我慢できるか、が勝敗を分ける最も大きなファクターという状況は今後もルールが変わらない限りは続いていくだろう。
そんな戦術の変遷を振り返るために昔のツイートを漁っていたのだが、すっかり忘れていたものが出てきた。
もちろんクビアクのアクシデントがあっての話だが、5年前にしてはなかなかいい線行ってる。
当たらない予想だけど、レオンの大会になるか、クリューカの大会になるかだと思っている。
イラン戦、ちょうど見終わりました。ちょっと終盤ミドルの圧が薄かったですが、良い試合でした。
石川祐希 が日本史上最高の逸材であることに疑問の余地はないでしょう。
これでタスクはクリアしたと言えます。ここからは冒険を楽しんでほしいと願うばかりです。