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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

きょうのセッターその19 ミゲル・アンヘル・ファラスカ



Miguel Angel Falasca


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このシリーズでは動画が残っているセッターを取り上げている。そうなると当たり前だが、古くても50年前に活躍したセッター、ということになる。なので、ここで取り上げるほとんどの方はご存命でおられる。少なくともここまで取り上げたセッターで亡くなっている方はいない。しかし残念ながら、今日とりあげるセッター、M・A・ファラスカはすでにもうこの世にいない。昨年の6月、引退して監督をしていたファラスカだが、突然の心臓発作で46年の生涯の幕を閉じた。


ファラスカは1973年生まれのスペインのセッターであるが、アルゼンチン生まれである。16歳の時に国内の経済危機から家族でスペインに移住してスペイン国籍を取得した。
ファラスカはなんといっても2007年のヨーロッパ選手権の優勝だ。スペインがだ、スペインが優勝したのだ。今でいえばスロベニアが優勝するよりもっとすごい大番狂わせであった。
しかもこの大会、スペインは一度も負けてない。こういう大金星をあげる時ってだいたい予選リーグでは負けてたりするのが常なのだが、完全優勝である。
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同じく無敗で決勝まで来ていたロシアとの対戦はなかなかに白熱した好ゲーム。選手の格だけでいえば明らかにロシアが上なんだけど、スペインの老獪さが勝ったというべきか。この時スペインはファラスカ34歳、デラフェンテとモルトが32歳、でオポジットだったファラスカの弟が30歳、リベロも30歳とスタメンの半分以上が30以上で、ベンチに控える貴公子パスカルは37とフィジカルのピークでいえばちょっと終わったようなチームだった。
それが準々決勝リーグの最終戦から決勝まで3試合連続のフルセット勝ちと、何度も苦しい場面を潜り抜けて、優勝した。


彼のキャリアとしてのピークはこの2007年の結果を受けて、翌シーズン移籍したポーランドのスクラ・ベウハトゥフでのものだろう。4シーズンで3回優勝し、2011/12チャンピオンズリーグもあと1点取れば優勝だったのだが準優勝。
2013年にロシアのチームで引退した後、すぐベウハトゥフの監督になった。そこでも1年目にリーグ優勝。その後はチェコの監督などもしたが、亡くなった前のシーズンは女子チームの監督にいきなり就任して驚いたものだった。


ファラスカのセットは少し特徴的で、ジャネッリが上がり際のセットという話はしたが、それとは逆で少し下がり際のセットとなる。ジャンプの頂点から少し落ちたところでボールとコンタクトする。とは言っても両者の間は0.3秒もないと思うが。
このタイミングだと相手のブロッカーが「あれ、まだ出てこない」と思い、少しタイミングを外される。野球のチェンジアップみたいな感じ。それでいて出てくるボールは鋭いので、ミドルとしたらやりにくいセッターだったと思う。
それにサーブがすごかった。セッターで歴代サーブ強いランキングあったら5本の指には入るだろう。


そこまで評価されていなかったというのもあるかもしれないが、フィジカルのピークは過ぎていた30代後半からキャリアハイの成績を残したファラスカ。
これだからセッターは面白いのだ。