憂国の代表人事
正直、静観を決め込みたかったところではありますが、昨日のエントリに対するコメントで意見を求められたので、それなりに所感を述べたいと思います。
ゲーリー氏に関しては、昨年終わりの記事で述べたのですが、結果を残す監督としてみると懐疑的に成らざるを得ませんでした。
なので、今回の件に関して、無条件に「ありえない」というスタンスをとれずにいる自分もいます。
2013年男子バレーボール10大ニュース - Stay Foolish
しかしながら、それはあくまでゲーリーの経験的なものを言っているのであって、資質がないという話をしているのではありません。
2020東京が決まった今、結果をそこまで気にせず新しい風を吹き込むチャンスというのは今しかありません。ゲーリー初年度、選手のコメントからは甘えに聞こえてしまいそうではありますが、新しいバレーに対する好意的なコメントが多かったように思います。個人スキルに関しては目に見えて変わってきた部分もありましたし、長い目で見て、ゲーリーも一緒に選手と成長できればそれもいいじゃないかと私は思っていました。日本全体の育成システムとしても刷新を図るチャンスでもあったように思います。
そういった中での1年での更迭というのは、非常に残念であるし1年を棒に振ってしまった感が否めません。
昨日の会見での強化事業本部長の「世界選手権の出場は当然と思っていたので、ショックだった。」「日本とアメリカのバレーを融合するのは難しいというのが全体の考え」というコメントはもちろん彼女自身が選んだわけではないとはいえ当事者意識を著しく欠いているし、越川選手が述べているように選手に対するヒアリングを行わなかったという点には疑問が残ります。たとえばアメリカでは代表監督を決めるにあたって、選手が大きな発言力を持つと聞いたことがあります。実際にプレーしている選手たちが手ごたえを感じているなら、それに勝る続投理由はないとは思うのですが。
とはいえ、性急すぎる交代劇にはなんらかの事情を考えずにはいられません。
そもそも去年の時点でなぜゲーリーを選んだのかというのが一番引っかかっている点でもあります。
北京後のあれこれでケチがついている全日本とはいえ、多くの国際大会に開催国枠で出場できるわけですし、決して魅力のない条件ではないはずで、それなりの応募があったのではないかと実は思っています。
外国人監督にするにしても、監督経験のないゲーリーを監督にしたというのは、なんらかの力が働き、フェアではない経緯があったのではないかと推察しています。
そして、それに端を発している昨年のクーデター騒ぎではないのかと。新政権になり、前政権のものはすべて悪いという論理が働いてしまったのかもしれません。そうでもなければ今回の経緯は少し釈然としません。
多くの方が述べているように変わってしまったものは仕方ないですし、南部氏は非常に能力のある方だと思っています。パナソニックを「時々強い」チームから「勝つ」チームに変えた手腕は疑いようのないものですし、特に代表選手抜きで勝った2008、2012年、ほぼ外国人選手抜きで勝った2009年黒鷲旗は圧巻でした。ブラジルとのパイプも太いですし、そのあたりは期待できるかなと思います。正直、パナソニックがIOCスポンサーってのと無関係なのかなとちょっとうがった見方はしてしまいますがね。
外国人監督になるならまだしも、日本人監督になるなら日本バレーは終わったという意見には賛同できません。
監督だって、チームだって生き物です。別にベラスコを招いたからといって成功する保証はありません。ベラスコだってチェコ、スペインでの日々は決して成功といえるものではありませんでした。ロシアは外国人監督では全くといっていいほど振るわず、アレクノに戻して急成長を遂げました。
プロの世界ではチームと監督の相性やバイオリズムというのは少なからず存在します。ふたを開けてみなければわからないというのもまたスポーツの世界の面白いところです。
日本のバレーボールの将来の憂いている気持ちはバレー界の誰でも同じはずです。
世界一をとった過去でもなく、遠い将来でもなく、今というときを見つめ、すべてのバレー人が当事者意識を持ち、1つになって強化に当たっていけば少しずつでもものごとは改善していくと信じていきたいと思います。