Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

2023ワールドカップバレーはワールドカップではない



日頃(というかずいぶんお久しぶりです)、このブログを読んで頂いているバレーボール大好きな方々には当たり前の話だろうが、これはちょっと広く啓蒙したい話であるので、了承いただきたい。


今、男子バレーボールはここ30年では類を見ない躍進を遂げ、先日のネーションズリーグでは3位に入り、世界ランクは5位に位置している。
これから8月にはアジア選手権が開かれ、9月にはBチームの出場するアジア競技大会、10月にはパリ五輪予選トーナメントが控えており、いずれの大会でも好成績が期待される。

number.bunshun.jp


あれ?今年はワールドカップがあるんじゃないの?ジャニーズ問題で話題になってたし。と思ったそこのあなた。確かに今年は女子サッカー、バスケットボール、ラグビーと各競技のワールドカップが開かれ、一応バレーボールのワールドカップも今秋開かれることになっている。しかし、筆者はそれをワールドカップと呼ぶことはどうしてもできない。
www.jva.or.jp


「今秋開かれるワールドカップバレーは、パリ五輪予選トーナメントのプールBをワールドカップと言い張っている」からだ。世界的には3箇所で行う五輪予選会のひとつを、日本の意向でワールドカップと呼んでいるのだ。
今まで日本で永く行われてきた経緯やテレビ局の事情等が絡んでいるのだろうが、大きな違和感を感じずにいられない。
決して水を差したいわけではない。今、本当に日本の男子バレーが強くなっているからこそ、彼らのプレーを一人でも多くの人に「余計な修辞なし」で見てほしいという気持ちから今キーを叩いている。


バレーボールのワールドカップはそもそも1965年、4年に一度の五輪と世界選手権の間を埋める大会として創設され、1977年からは恒久的に日本で開催されていた。フジテレビ系列が中継を行い、多くのジャニーズタレントもここからデビューした。それが国内のバレーボール人気に大きく貢献したことを否定はできない。かくいう筆者も小学生時分、ワールドカップを見た次の日には校庭でバレーボールに興じたものである。
なので、ワールドカップやってるーと思わずテレビに見入る層がいることは間違いないし、それによって裾野が広がるという向きもあろうが、やっぱり嘘は良くない。


2019年を最後に、ワールドカップは実質的に廃止され(グラチャンも)、オリンピック前年には世界ランク上位24チームを3つのプールにわけた五輪予選トーナメントが世界3箇所(今回男子はブラジル、日本、中国。女子は中国、日本、ポーランド)で開かれることになった。このあたりは、毎年開催のネーションズリーグの影響度、格を高めたいFIVBの狙いであると推測している。
この3箇所のうち、日本で開かれるプールBを、今、ワールドカップと呼んでいるのだ。別に世界一を決めるわけでもないし、世界上位24チームのうちの3分の1が集まって、総当たりして五輪の切符の争う大会だ。


2019年以前の、本当にワールドカップであった時代にも多くの問題はあった。ワールドカップにも関わらず、日本の試合時間が確実な総当たり1回戦で決勝というものがない。開催地である日本は常に同じ時間の試合を戦うため、日本と夜の試合をして、次の日、朝一で試合に望まなければならない場合もあった海外チーム。日本戦のみタイムアウトの時間等が違う。9位の日本チームから選ばれるMVPエトセトラ。


と多々の問題があったが、さすがに今回のような世界一を決めるわけでもない大会をワールドカップだと強弁するのは如何なものだろうか。
当然、国際バレーボール連盟FIVBのwebサイトにおいて「ワールドカップ」という大会名は見ることはできないが、日本大会をワールドカップとすると述べている記事が一つだけ見つかった。昨年10月の記事で、放映権料の増額などが行われたことは想像に難くない。

https://en.volleyballworld.com/news/japan-unveiled-as-first-hosts-of-olympic-qualification-tournaments


ジャニーズ問題にせよ、2019年以前の問題にせよ、今回の問題にせよ、やはり本質的な原因はスポーツを、チームを信じていないことに端を発している。そうでもしなければ客入らないでしょ、視聴率稼げないでしょと。もちろんプロデュースは必要だとしても、それはそれそのものを輝かせなければ意味がない。
あれやこれやとオマケをつける通販番組と同じで、売り手が商品を信じていないのだ。


今更騒いだところで、どうなることでもないのだが日本男子バレーは明らかに強くなっており、余分な虚飾は必要ない。サッカーのワールドカップ予選だって十分コンテンツとして成立しているのだから、これはワールドカップだと尾ヒレをつけず、パリ五輪予選トーナメントと言い切れば良いではないか。


バレーボールファンとしてはこの大会は「OQT(Olympic Qualification Tounaments)」と呼んでほしい。


将来的な提案として、やはりバスケットボールがそうしたように世界選手権を「ワールドカップ」に改称すべきであろう。
オリンピックとワールドカップの2本柱。サッカーのオリンピックは仕方ないとしても、チーム競技はこの2つが大きな大会というコモンセンスができたら良いと思っている。