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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

きょうのセッターその26 アレクサンダー・ブティコ

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長年、世界でトップのクラブの一つであるゼニト・カザンのセッターを務めるアレクサンダー・ブティコ。
綴りがButko、なのでブツコ、ブトコといろいろカタカナ表記はあるが、一番認知されている感があるので、ブティコで通させていただく。


ブティコのセットはいい意味でロシア人ぽくない。
ロシア人はザイツェフの影響なのか、そういう教え方なのか、ジャンプセットをあまり用いず、頭の真上でボールを待って、さばくようなセッターが多い。全部がそうではないけど、ハムツキフとか、グランキンとかがそういうイメージ。
ブティコはほぼジャンプセットで高いところでボールを早めに取りに行くイメージ。どちらが良いということもないが、ブティコはより積極的なイメージ。なので若干バタバタした印象は与えるが、一定のリズムで質のよいセットをしている。
あとサーブも最近のロシアの若い子は強いサーブ打つが、昔はセッターといえば、フロートでショートサーブ打つような選手が多かった。ブティコはがんがん攻めて点もがんがん取るので、そういうところもロシアっぽくないセッターではある。



ブティコはもともとベラルーシ国籍。10代後半でロシアに移籍してきて、ロシアのパスポートを取得した。ロシアとベラルーシの育成がどれだけ違うかはわからないが、もしかしたらそのあたりもロシアっぽくなさに関係しているのかもしれない。
FIVBのルールでは、FIVB主催のシニアの国際大会に出たことのある選手が他の国に国籍を変えた場合、そういった帰化選手は1人しか登録することができない。ムセルスキーもウクライナからの帰化になるが、ウクライナではジュニアの大会に出てるかもしれないが、シニアの国際大会は出ていないので、特に制限はない。ブティコもロシア代表のメンバー構成的にほかの帰化選手を使わなければならないときは代表は外れていた(ミハイロフが怪我でウクライナ帰化のパブロフを使わなければならないときとか)。
長年ロシア代表のセッターも務めるブティコであるが、最近、キューバからサンクトペテルブルグでプレーするカメホが帰化したため、ブティコかカメホ、どちらかかしか使えないということになる。
もしかしたらすでにどこかのメディアで結論が書かれているかもしれないが、サムエルボは難しい選択に頭を悩ませることになるだろう。
ロシアも近年、若いセッター、コブザル、コバリョフ、パンコフなんかは出てきているが、やはり大事な試合はブティコかグランキンが出てくる、という印象。しかし、最近の使い方を見るにすでにブティコを外す準備を始めてるのかなーと思わなくもない。


オリンピックの金の経験もあるブティコだが、やはり近年のカザンでの活躍は目を見張るものがある。チャンピオンズリーグ3連覇はもちろんレオンの功績は大きいが、簡単にできることではない。
もちろん環境の問題や、それ以外の要因もあるかもだが、ペルージャのレオンよりは、カザンのレオンの方がすごかった印象が強く、ブティコがより活かしていた、という面もゼロではないだろう。
アシェフがいなくなってからは、キャプテンも務めているわけだが、あまり引っ張るという感じではなく「静かなる狼」感が強い。2011ワールドカップフェイスガードしたブティコ、怖かったな。

きょうのセッターその25 ハン・ソンス

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最高年俸になるとハン・ソンス(大韓航空)の6億5000万ウォン(約6500万円)
韓国バレー界の“貴公子”ムン・ソンミンに日韓Vリーグのことを聞いた!!!(慎武宏) - 個人 - Yahoo!ニュース

おそらく世界中の現役で最も年棒の高いセッターとなると、ハン・ソンスということになるだろう。
韓国の相場自体が他の国より高いのだが、セッターが一番給料が高いというのもなかなか珍しい。それだけ価値のある選手ということだろう。
基本的にはバレーボールはサイド、もしくはオポジットの選手が一番高く、ミドルとセッターはほぼ同じかセッターが少し高く、リベロが一番給料は安い、という傾向にあるようだ。
もちろん唯一ブルーノ・レゼンデがこれ以上の給料をもらっている可能性はあるが、それ以外の選手は遠く及ばないであろう。


ハン・ソンスは1985年生まれの35歳。大学卒業以来、大韓航空に所属している。
若いころは同期のユ・カンウ(サムソンにレオナルドがいたころのセッター)のほうが評価が高く、ドラフトでの指名もユのほうが先であった。ハン・ソンスが大韓航空に入った後も、ユ・カンウとの2対1のトレード話が出たりと、そこまで順風満帆なキャリアではない。
シン・ヨンチョルが大韓航空の監督になってあたりからハン・ソンスは頭角を現し、代表チームの正セッターになった。大体2010年ごろ。


そのあと兵役に入るのだが、2014年のアジア大会には軍属のまま出場。これは他の競技でもあまり例がないらしい。それがどれくらいすごいことなのか、ちょっと実感としてわかないが、いろんな記事を見るになかなかすごいかなりの特例だったようだ。
お正月の東京五輪のアジア予選では準決勝でイランにフルセットと肉薄したが、マルーフの老獪な時間稼ぎにやられてしまった。


「セッターは背中を汚せ」(それくらいボールの下に入り込んで自分を犠牲にしてセットしろの意)という格言を聞いたことがあるが、ハン・ソンスのアンダーハンドセットはほとんど見たことがない。ちょっと転びすぎじゃないかいという場面も多いが、韓国のセッターはそういった身を粉にする選手が多い。


今年大韓航空は以前オーストラリアなどで指揮をとったサンティッリが、おそらく韓国男子では初めて外国人監督として就任するが、大韓航空がどのように変化するか、とても楽しみである。
ちなみに前述の若いころ、ハン・ソンスより評価の高かったユ・カンウが現在の大韓航空のセカンドセッターを務める。歴史のめぐりあわせというのはなかなか面白いものである。

きょうのセッター番外編その2 カーチ・キライ

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(画質が粗いが、序盤でサーブを打つ白チーム31番)



「セッターだった」名選手を紹介している番外編。今日はあのカーチ・キライ。
今更、カーチ・キライの説明はしないが、一応、Wikipediaのリンクを貼っておく。
カーチ・キライ - Wikipedia


カーチ・キライは大学時代、ツーセッターの一角としてプレーしていた。
キライの在籍したUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の監督、アル・スケイツは2012年まで50シーズン、UCLAの監督を務め、そのうち19回全米チャンピオンに輝いており、この記録はすべての大学スポーツの中で最多である。またすべての試合の勝敗は1239勝290敗。この勝率81%もすべての大学スポーツの指導者の中で最高である。半世紀トップコーチであり続けたわけだから、畏敬の念しかわかない。


NCAA4連覇を含む特に勝率の高かった1970年代から80年代中盤まで彼は好んでツーセッターシステムを用いた。
カーチ・キライが1年生の時、無敗でNCAAチャンピオンになったが(動画の試合)、その時の対角は伝説的ビーチバレーボール選手のシンジン・スミス。
その次の年はドヴォラック、パワーズのいるUSCに決勝で敗れてしまうが、残りの年もキライのツーセッターで優勝。
大学時代、キライが出場した公式戦の成績は123勝5敗というのだから、驚愕である。


ちなみに現在UCLAアメリカ代表監督のスパローが指揮をとるが、最近またツーセッターシステムを用いているので、少しニヤニヤしてしまう。
3年前まではそのシンジン・スミスの息子がツーセッターやっていたのだから、歴史というのはおもしろい。


さて、カーチ・キライのセッティングであるが、重心が低く、いかにもビーチの選手といった趣。
なので、少し重たい感じのセットには見えるが、そつなくこなしている。ただ動画が粗いのとそこまで長くないので、あまりしっかりと判断できない。


動画はないのだが、キライはアメリカ代表でも一度セッターをしている。
ロス五輪で優勝した次の年、1985年の北中米選手権キューバとの決勝。ドヴォラックとストークが代表のセッターだったが、ドヴォラックが何らかの理由で不在、ストークも試合中に脱水症状でプレーできなくなり、4セット目からカーチ・キライがセッターをしたらしい。何とかその4セット目を取り、優勝した。大学時代のセッター経験がなければ、この優勝はなかったかもしれない。


セッターでも全米一が3回。まさにミスターバレーボールの称号にふさわしい。

きょうのセッターその24 パヴェウ・ザグムニ

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Rozgrywający im starszy, tym lepszy – podobnie jak wino.
セッターは古ければ古いほど良いーまさにワインのように
Paweł Zagumny – Wikicytaty

現在はポーランドリーグの会長を務めるパヴェウ・ザグムニ。2014年の世界選手権優勝に貢献。ポーランド人で唯一オリンピックに4回出場している選手となる。
前述の名言のように、まさに老獪という言葉の似合うリーダー。声を荒げるところも見たことないし、グルビッチと同様、静かに模範となってチームを引っ張るタイプだろう。

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セッティングも無駄な動きが少なく、高いハンドポジションからスパイカーにボールを供給していく。ハイセットにしてもほとんど力まず、最低限のエネルギーでボールを飛ばす。
ボールとのコンタクトポイントまでの移動の歩数が本当に少なく、ほぼ無意識なのだろうが、最初に長い歩幅、そして徐々に短くなるステップで調整する様はまさに熟練。
体幹の回転の力を活かしたバックセットが絶品で、ボールをタッチするまでの姿勢にはほとんど変わりがなく、ブロッカーがその姿勢からスパイカーを判断することは困難を極めるだろう。


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引退試合にこれだけ多くのスターが集まるところからも、彼が多くのプレーヤーの心の中に残っており、慕われていた様子がうかがえる。
そもそも引退間もなく、リーグの会長になるぐらいだから、かなり人望があり任せて大丈夫だと思わせるだけの信頼感があったのだと思う。

きょうのセッターその23 フランク・デペステレ


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この動画のパイプのタイミング、なかなかに攻めてる。


デペステレは主に2000年代に活躍したベルギーのセッターで、今年43歳になるが、まだ現役の左利きのセッターである。
あまり大きなタイトルはないが、約10年ベルギー代表のセッターであったし、母国ベルギー以外に7か国渡り歩いた傭兵セッターでもある。


セッターは左利きのほうが有利、というのは定説であるが、言うほど左利きのセッターがいないのではないか、ということに思い当たる。
そもそも左利きの人数は多くないので、気にするほどの問題ではないのかもしれないが、もっといてよい気もする。とはいえ、ここまでリカルド、ストークですで二人紹介しているし、全くいないというわけでもないので、何とも言えないのであるが、個人的には利き目の問題的にセット技術習得にはなかなか苦労をする、と考えている。ただそこまでの問題とも思えないし、左の強いツーアタックというのは大きなメリットだ。
やはり基本的には右利き目の方がセットはイージーだと考える。もちろん端から見ていて利き目なんてわからないのだが、バックセットの後、基本的にどちら回りでライト側に正対するかで利き目がわかるんじゃないかな、と思っている。右回りなら右利き目、左回りなら左利き目。あくまで個人的な手法なので確証はないし、信頼しないでほしい。それでいくと、たぶんグルビッチは左利き目だし、リカルドは右利き目。ただセットの技術的に回りが入っている場合もあるし、必ずしも当てはまらないとは思うので、都市伝説くらいに思っといていいだろう。


って、なんの話してたんだろう。そうだ、左利きのセッター。
デペステレは左利き、しかもスパイクやサーブの踏切は逆足なので、パッと見、かなり違和感のあるセッティングをする。
少しタメのある、若干ジャンプ落ち際のボールタッチであまり肩の向きというを気にしていない。バックセットはほとんど斜め45度バックセットといった感じ。
どうしても我々は定着したイメージというのがあるので、左軸でボール追っていく感じとか、かなり頭と離れたところでボールタッチするところに違和感はあるわけだが、別にこれはこれで面白いし、良いなと思う。


長い距離のセットがピタッとハマるんだ、デペステレは。
対角線となるコート奥からのセットが秀逸で、絶妙な軌道というのだろうか。


またデペステレが面白いのはサーブで、前述のように逆足なのでタイミングを外されるのかなかなか高い効果率を残していたように思う。
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