またやっていきたいと思います。東京の時の記事を下敷きにしていくので、まだお読みでない方はこちらから。
sputnik0829.hatenadiary.com
いうまでもないですが、トレンドといってもバレーの形が大きく変わるわけではないです。この先も大きなルール変更がない限りは大きく変わることはないでしょう。今まで見られていた傾向が強まったり、弱まったり、特定の選手のプレーが広まったり、行われなくなったり、そんな機微を拾っていけたらいいなと思っています。
レセプションでどれだけ耐えられるか、を超えて
東京の時に書いたように、サーブとレセプションの我慢比べが国際トップレベルの勝負を分ける一番のファクターだというのは、ここ15年ほど変わらない話である。しかし、サーブの強さはどのチームも標準装備してきている以上、それに対するレセプションの固さ、精度がより勝負の分かれ目になっていると感じる昨今である。
日本のここ数年の躍進には数々の要因があるが、昨季セリエA1位だった高橋藍のパス力は、なくてはならない要素である。相手のサーブに壊されることなく、むしろ良質なパスでセッターからの攻撃を展開していけるパス力は日本のサイドアウトの安定のみならず、昨季のモンツァの躍進にも大きく寄与している。もちろん、じゃあ単にリベロ級のパス力を持つ選手を入れればいいかといえばそうではなく、攻撃力、サーブ力を兼ね備えたパス力を持った選手が重要になってきているということだ。当たり前だが、そんな選手がたくさんいるわけではない。
そういう意味では、予選ラウンドではレアルやレオンがチームのアキレス腱になってしまったことは否定できない。
ちなみにここで非公式&簡単なデータにはなるが、種々のスキルをランキング形式で見ることができる。
このサイトではほかのリーグなども同様に見ることができるので、比較などを行うのも面白いだろう。
leaderboard.untan.gl
相手後衛オポジットを軽視したディフェンス
以前から傾向があった話ではあるが、相手の状態がよく、オポジットが後衛の時はそれを軽視し、前衛のミドル、OH、パイプにブロックを絞る動きがより顕著に見えてきたように思う。相手オポジットが後衛の時は、レフトブロッカーが内側に位置をとるというのはおなじみの話ではあるが、最近では、オポジットに上げられた場合、サイドブロックも無理してラインまで行かず、フロアディフェンスが2枚ラインに入るシステムを構築しているチームが見られた。
youtu.be
決められているが、こんなイメージ。使える映像が限られるので、事前親善試合のものになるが。
オポの攻撃力や点数、データに基づいて、常に行うわけではないが、攻撃4枚、ブロック3枚の数的不利の中でブロックはすべてを見るのではなく、自分たちの中で取捨選択をして数的対等を作る。残り一枚に上げられても6人全員で最低限のディフェンス陣形を作っていく。
これからのディフェンス戦術は、リードブロックをベースにしながらも、データから導き出された、より「選択と集中」の方向に舵を切っていくことが示唆される。
「選択と集中」といえば、少し話は戻るが、大胆にレセプション位置をシフトしているチームもあった。ドイツ、アルゼンチン、スロベニアあたりがそれで、4枚レシーブができないときでも3人でコートの2/3を守るということをしていた。これも相手のサーブのコース傾向に基づいたものであろうが、人のいないエリアに打たれるというリスクを負ってでも、飛んでくる確率の高いエリアを守る。
これら3チームの監督はポーランドリーグで監督している3人なので、もしかしたらポーランドリーグのトレンドがあるのかもしれない。そういえば今大会にはザクサの監督経験者が5人もいるのだな(ジャーニ(はまだこれからだけど)、サムエルボ、クレトゥ、デジョルジ、グルビッチ)。
OHの負担、勝敗に影響する割合が増している
前述のレセプションの話に加え、前衛に絞ったブロックは攻撃面でも負担が増えているし、セッターがファーストボールをとった後はセカンドセッターになるし、ハイボールを決める力も求められるし、現代のバレーボールは、よりアウトサイドヒッターの出来が勝敗のウェイトに占める割合が増えてきているといえる。確かにオポジットの方が、多くの点数をとるので、重要なポジションともいえるが、オポジットの数字が良くなくても、アウトサイドヒッターがしっかり守れて、攻められればそこまでゲームが崩れることはない。野球では先発投手がどれだけゲームを作れるかというQS(クオリティ・スタート)という指標があるが、バレーボールではゲームが作れるかというのは、両アウトサイドヒッターの出来に依存している割合が大きいと考える。
つまり攻守の質が高いアウトサイドヒッターというのは価値が高いし、そういう意味で、昨季セリエAで優勝したペルージャがOHに石川を選んだというのは本当にすごいことなのだ。しかも予選リーグアメリカ戦のように彼の調子如何では、彼を外すことができるというのは日本の明るい未来だと思う。
OHの負担を軽くする意味では、アメリカ的な3OHがここ数年でもっと増えてくると思ったのだが、そうはならなかった。やはり、3OHは複数の選手が複数の役目をこなす必要があるため、属人的に過ぎるのだろう。アメリカもどちらかといえば苦肉の策感があるし、アンダーソンはどうしても外せないだろう。
ミドルのトランジション攻撃増加
ラリー中のミドルの攻撃が増えていると思う。今までなら、長いラリーの最後でサイドに託すような場面でもミドルが決める局面が多くみられるようになってきた。データがないので、以前と比べてどうかの部分は印象でしかないのだが、無理やり使っている感じでもないので、そもそものラリーの質、つまりミドルを使えるようなディフェンスのレベルが上がっているのかもしれない。
ミドルの上位勢(ブレーメ、コハノフスキ、エイブリル、ホルトあたり)は予選ラウンドで75%以上の決定率を残している。当たり前だが、サイドアウトの局面だけでなく、トランジションの局面でミドルが機能するようになるとより攻撃の厚みが増すだろう。
予選ラウンドが終わった段階でこれを書いているが、正直言ってどこが優勝するかわからないし、準々決勝のどの試合を見てもどちらが勝つかわからない。もともと「五輪の準々決勝は何が起こるかわからない」論者ではあるが、それはあくまで下馬評があったうえで番狂わせも起こりうるという話だが、今回はその下馬評すら立てられない。
ベスト8に残ったチーム同士の対戦ではストレートで決着する試合が一つもなかった。いわゆるカオスな状況で、本当に何が起こるか、わからないとみている。相性や流れを変える一つのプレー、一つの選手交代で試合が決まってくるのではないか。
あくまで予選がどうだったかの話でいえば、各グループで1位になったのは、メンバーをほぼ固定している3チームであった。もちろんここから層の厚さを誇るチームが盛りかえす可能性もあるのだが、「完成度」であったり「熟成度」が問われる大会になる可能性もあるだろう。