Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

私選東京五輪ベスト6



今までオリンピックといえばインカレにおける4年生力よろしく、ベテラン力が物をいう大会だと思っていた。
リオはセルジオ、ロンドンはテチューヒン、北京はボールらたくさんのベテラン、アテネは控えではあったがナウベルチとリマ、シドニーはグルビッチ兄。目の色を変えた経験豊富なベテランたちがそれぞれの大会でチームの原動力となっていた。「未だ」というべきかはわからないが、やはりバレーボールにおいてオリンピックは最大の大会であり、多くの選手の目標である。


今大会、1年延期されたという要因*1もあったのかもしれないが、どちらかといえば問われているのはチームの層の厚さと若い力であったように思う。この東京大会全38試合中11試合がフルセットマッチとなった。過去大会と比較するとリオは4試合、ロンドンでは5試合であった。一概には言えないが、チーム力が均衡してきている可能性がある。そのような中で固定のメンバーで戦うのは難しいし、停滞したチームが息を吹き返すには新しいエネルギーが必要だ。


優勝したフランスも開幕時ブリザール、クレブノはスタメンではなかった。ROC(ロシア)も決勝は控えメンバーで息を吹き返し、ブラジルも最後の最後は若手が可能性を示した。


そういう意味では今大会のベストチームにそこまで厚い選手層を持たずに戦い抜いたアルゼンチンを挙げずにはいかないし、どうしてもこのベスト6でもアルゼンチンの選手が多くなってしまった。


最終日を勝利で終えたフランスとアルゼンチンは開幕3試合を1勝2敗でスタートした。そういった早めにピンチに陥ることが、結果論ではあるがこの大会で結果を残す重要なファクターだったように思う。崖っぷちの状態が、必死の改善と、ある種の開き直りをチームに与えた。これもチーム間の力差がほとんどない仮説を補強するものだろう。


では、個人的なベスト6。インパクトだけで入れたい選手もまだまだいるし、だいぶ迷った。
表記は五輪公式ページ準拠。

セッター ルチアーノ・デ・セッコ🇦🇷

この大会、デ・セッコとブリザール、どちらがベストセッターかを尋ねれば、ブリザールのほうが多いかもしれない。しかし私はデ・セッコを推したい。
バレーボールにおける攻撃力はアタッカーの能力の総和ではなく、アタッカーとセッターの能力の積なのだと改めて気付かされた。アタッカー能力の総和では負けていた強豪国を次々と撃破。特に両ミドルとリマの使い方が逸品だった。

次点 アントワヌ・ブリザール🇫🇷

実際のところMVP級の活躍。トニウッティの怪我があったらしいが、停滞していたフランスをクレブノ、パトリー、シエニエゼらフランス「チームyavbou」のオリジナルメンバーでない選手たちと共に救った。あのサーブはすごかった。
トニウッティほどロジカルじゃないんだけど、そこが良い。
セッターに関してはベン スリメネ入れたかったし、サンダース入れたかった…

オポジット マキシム・ミハイロフROC

若いタレントが揃うROC(ロシア)の中でミハイロフはいわゆる一般的に言われるようなリーダーではなかった。
しかし、その背中で、プレーで、チームを引っ張った。寡黙で、愚直で、精密だった。
こういう形の引っ張り方もあるのだろうな。

次点 ジャン・パトリ🇫🇷

準々決勝ポーランド戦はまさに立役者。いやはやすごい選手になったと思ったが、決勝はもう少し頑張りましょうという結果。
クレクとちょっと迷った。

ミドル アグスティン・ロセル🇦🇷

3位決定戦7本のブロックを見せたが、拾われたシャット級のボールが少なくともあと3本はあった。
それで幅を十分に使えるクイックがあって、サーブも強くて、そして顔がかわいい。しかもまだ23。
大会公式は193cmということだが、さすがにそれはないんじゃないかなぁ。98はありそう。

ミドル ニコラ・ルゴフ🇫🇷

どちらかといえば鈍重なイメージで、フランスが強くなり始めた当時は彼のポジションに誰か出てくれば、もう一歩フランスは前に進めるのでは?という存在であったように思う。しかし、特に今大会はサイドアウトでも十二分の活躍、ブロックも更に進化を遂げていた。

次点 バルテレミ・シヌニエズ🇫🇷

髪型でなんか損してる感もあるんだけど、あの決定力はフランスの大きな武器。セリエでは打ってるジャンプサーブが仕上がってくれば更に恐ろしい選手になるだろう。

ルーカス・サートカンプ🇧🇷

大会通じて66%以上の決定率はお見事。サーブも安定感を増し、足技も冴えた(笑)

サイド エアルバン・ヌガペト🇫🇷

まさにMVPに相応しい活躍。今まで大きなタイトル(スクデットとかはあるけど)は手にしていなかったが、この10年世界のバレーボールを牽引したのはなんだかんだいって彼だったのかもしれない。そして彼が30代になり、更にどんなプレーヤーになっていくのかが気になってならない。いきなり代表引退とかしちゃいそうだけどね・・・

サイド ファクンド・コンテ🇦🇷

もちろん南米特有の熱さというのは持ち合わせていたが、どちらかといえば、淡白側のプレーヤーかと思っていた。
だが、この大会はまさに獣だった。咆哮を上げるときなんか、特にお父上そっくり。
今大会のエースはコンテであった。

次点 トレバー・クレブノ🇫🇷

フランスにレセプションの安定感をもたらしたクレブノ。一皮むけた感がある。フランスって中盤以降、レセプションの大崩れなかったように思う。もちろんティリでもそこの安定感は変わらないんだろうけど。
あの3枚ブロックを抜くスパイクはすごかった。

ドミトリー・ヴォルコフ🇷🇺

本来であればクリューカのほうが筋であるが、クリューカのポテンシャルを考えれば、まだまだの大会であったと思う。
今大会に関しては少し気の触れた感じでロシアを鼓舞し続けたヴォルコフに。
もうちょっとレセプションが安定すれば、世界屈指のオールラウンドなアウトサイドになりえる。

リベロ サンティアゴ・ダナニ🇦🇷

読みと、特に食い込まれ気味の面の作り方が上手だった。
でも、なんというか日本人にもいそうな動きというか、逆に日本人ぽいというか。

次点 パベウ・ザトルスキ🇵🇱

もちろんタレスも良かったし、グレベニコフも良かったんだけど、ザトルスキのディグは時折、常人の域を超えるときがあった。
ボールコントロールが異常で120kmのスパイクが時たま手にくっつくんだよ、理屈がよくわからないけど。


この選手たちが2021/21シーズン、所属するチームは以下。

デ・セッコ Cucine Lube Civitanova🇮🇹
ブリザール You Energy Volley Piacenza🇮🇹
ミハイロフ Zenit Kazan🇷🇺
パトリ Powervolley Milano🇮🇹
ロセル Tourcoing Lille Métropole🇫🇷
ルゴフ Montpellier UC🇫🇷
シヌニエズ Powervolley Milano🇮🇹
ルーカス Vôlei Renata🇧🇷
ヌガペト Modena Volley🇮🇹
コンテ Aluron CMC Warta Zawiercie🇵🇱
クレブノ Jastrzębski Węgiel🇵🇱
ヴォルコフ Zenit Kazan🇷🇺
ダナニ Berlin Recycling Volleys🇩🇪
ザトルスキ Asseco Resovia Rzeszów🇵🇱

*1:もしかしたら新しいオリンピックサイクルがすでに始まっていたのかもしれない