Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

プロでもアマでもないということ



東京マラソンで日本人1位となり、世界陸上代表の内定を獲得した川内選手のように、プレミアリーグの一部の選手や、チャレンジリーグのほとんどの選手は、企業などの勤務先で一般業務をした上で、バレーボールをしている。チャレンジにいくつかあるクラブチームも、基本的には選手はアマチュアとして、他に本業を持っている。練習のために、業務を免除されるところもあるだろうが、それでも遅い時間の練習になることが多いだろうし、毎日練習することもままならない。リーグに入れば、休みなどほとんどない状況だろう。しかし、だからこそ、バレーボールに本気だとも言える。そうでもなければ、とても続けられるものでない。


一方、プレミアリーグの大部分の選手は、企業の社員だが、バレーだけをしている。ここでは雇用形態がプロとアマの間という意味でセミプロという表現を使わせていただく。オフシーズンには、一般業務をしたりするケースもあるようだが、基本的にはバレーボールをすることが彼らの仕事になっている。プロ契約している選手は全体の5%くらいしかいないだろうか。女子では逆に雇用形態としてはプロ(契約社員?)が多いと聞く。そこいらは企業間でばらつきがあるらしいが。


プレミアとチャレンジ、そして大学をまったく事前知識なしに見た時、そこにあるバレーボールの差はなんだろうと考えたとき、選手層、外国人の有無、身長や選手能力の違いを除けば、やっているバレー自体に正直そこまで差がないと思うときがある。
要するにカテゴリ間の強さを分けているものが、バレーの質ではなく、選手の能力の差だけになっていないかということだ。プレミアの選手たちにバレーを生業としている意識みたいなものが、プレーの一つ一つから感じられないときがある。もちろんどんなレベルだって、同じ人間なのだから似たようなミスはある。ただ、プレミアの選手達にラリー中に助走をサボる、簡単なチャンスボールを返せないといった、意識に問題があるプレーを見せられると少し残念な気持ちになる。練習量は格段にプレミアの方が多いはずなのに、そこまでバレーに差が現れない。時には負けたりもする。


そして全体的に見たら、チャレンジの選手の方がバレーを楽しんでいるように感じる*1。楽しんでいればいいというわけではないのだが楽しんでバレーをしているのを見た方がこちらは愉しい。彼らからは、バレーが出来る喜びを感じることが出来る。そこには、しっかり仕事もした上でバレーをしている矜持みたいなものがあるのかもしれない。


セミプロの選手達は、形の上ではバレーで飯を食っているわけだが、あくまでサラリーマンである。プロにはプロで、バレーをして金をもらっているプライドがあるだろうし、バレーが出来なければ失業者になるというリスクも背負っている。だが、セミプロはバレーが出来なくても、失業することはない。その一方で引退を宣告されれば、今ある将来の保証や移籍の不活発さを考えると他のチームでバレーを続けることは難しい。ただそうして引退した後で社業をするとなっても、それまでバレーしかしてきていないのだから、はっきり言えば、30過ぎでロクに仕事が出来ないサラリーマンが生まれるわけだ。


人生を考えた時に、好きなバレーに専念出来て、将来も保証されていることは幸せであるかもしれない。
ただ一人の選手として考えた時、彼らはハングリーさをもがれているとも言える。
以前はほとんどのチームが仕事した上でバレーをしていた。月バレには毎月のように作業着姿の植田氏やメガネスーツ姿の大竹氏のインタビューが出ていた。
選手のためを思って、バレーに専念させたわけだが、結果的には彼らをぬるま湯につけていることになっていないか。
システム自体が悪いとは思っていない。選手一人一人にもっとバレーを生業にしている自覚をもってほしいのだ。
彼らがバレー選手として、社会にも会社にも貢献出来る日が来るなら、チームがなくなることはまず、ないだろう。

*1:もちろんプレミアにもすごく楽しそうにバレーする選手やチームもいるが・・・