Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

昔のバレーボールをみてみよう('86世界選手権決勝)



久々のこのシリーズ。
今日は、1986年パリで開かれた世界選手権決勝。アメリカ-ソ連
この前年の85年のワールドカップ、ロサンゼルス五輪には不参加だったソ連は、出場している大会では77年以降初めて優勝を逃した。
世界一の座から引きづりおろされたソ連は、雪辱を期して若干はアメリカのエッセンスを取り入れるも、それでもやはりアメリカの壁は高かったというこの大会。

縦視点メインなので非常に試合が見やすい。しかもネット下からの映像とか新鮮なカメラワークが多い。なのでいろんな発見があり、ついつい長文になってしまった。

監督はアメリカがダグ・ビルから引き継いだ、マーブ・ダンフィー。ソ連は往年JTも率いたパルシン・ゲンナジー
各チームのラインナップはこちら。アメリカはフロントオーダー、ソ連はバックオーダー。
ソ連の7番の選手って誰でしょう?アントーノフ?

ソ連

4ザイツェフ  7ビルデ?  10ソロカレットソロコレート
1パンチェンコ 3サビン  5シュクリーヒン
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6ティモンズ 13パワーズ   4ストブルトリック
15キライ   1ドヴォラック  7バック

アメリ


0:00 ソ連、ザイツェフのサーブからスタート。アメリカはフローターに対して、キライとストブルトリックの二人でサーブレシーブ。
結果的にはソ連がシャットアウトで0-1とするが、前年までのロシアであれば、コミットに跳んでいたはず。ただリードブロックをしたいのだろうが、ミドルが沈み込んでしまっており、まだまだ定着しきっていないことを伺わせる。


0:24 アメリカ、ティモンズのクイック。ここでもソ連はリードブロックを試みるもティモンズの高くてはやいクイックにブロックが整わない。クイックに対するリードブロックの弱点を見事についている。アメリカも他チームがリードブロックを取り入れたときまで考えていたのかも知れない。そういう意味ではまだまだこの時期というのは、早く取り入れた者のメリットがあったのだろう。


0:39 アメリカはこんな1セット目からスイッチブロックでブロッカーの位置を変えている。本来オポのパワーズが真ん中を、ミドルのティモンズがレフト側、キライがライト側に跳んでいる。おそらくティモンズがパンチェンコをマンマークという戦術だろうか。パワーズがコミット。ティモンズは終始パンチェンコを視界に入れているが、クイックに上がるのを見てヘルプブロック。


0:54 ソ連、パンチェンコのジャンプサーブ。ジャンプサーブを打ち始めたのはいつ頃からなのだろう。アメリカはキライ、パワーズ、ストブルトリックの3枚で守る。
ソ連は1本目のスパイクではなんとかリードで対応出来ているが、ラリー中はほとんどコミット。ラリー中にはついつい日頃のクセが出てしまうもの。まだまだソ連がリードブロックを導入して間もないことがここからも伺える。


1:37 ソ連がスタックブロックを用いる。ミドルは常にティモンズにマンマーク。後ろに控えるブロッカーがサイド攻撃に備えている。後ろのブロッカーはレフト側のキライに一瞬ゲス気味。このブロッカーがライト側はほとんど見ていないことを考えると、ライトバックの攻撃がそこまでシステムに組み込まれてはいないということだろう。このスタックはライトバックのケアというよりは、キライがライト側に移動攻撃したときに備えるという向きが強い。2本目のチャンスボールからの攻撃に対してもスタック。キライのフェイントモーションが、浮いているブロッカーを中途半端な位置に釘付けにしている。最後はアメリカが3枚ブロックを仕留める。動画を見ての推測だが、当時3枚ブロックを用いていたのは、アメリカぐらいではなかろうか。
ソ連のバックセンターが上がっていることも興味深い。いわゆるマンアップとかシックスアップと言われるもの。おもしろいのはセッターがそこに入って、サイドに上がった時はセッターがそのまま下がるところ。通常マンアップであれば、サイドに上がるとセッターはバックライトにシフトして、ライト側にいた選手がバックセンターにシフトすることが多い。バックセンターにセッターが入ると非効率なのだがなぁ。ソ連のスタイルだろうか。


2:10 アメリカのミドル、バックが圧倒的なラリー。当時、世界一のミドルだっただろう。

2:49 1-1。ロシアのサイドアウト。クイックに対してアメリカがリードで3枚対応。レフト側のキライに当たってブロック決定。アメリカの優位が決定づけられた瞬間とも言える。ソ連にしてみれば、「何でこれに3枚来れるんだ!?」といった心境だろう。高さはあるが、通過点が低く、ほとんど手が出ていないキライに当ててしまう。


2:50 3-1。2連続得点でアメリカが動く。先ほどセンターで跳んでいたバックが相手レフト側にスイッチ。そして実際にトスはそちらへ。アメリカがソ連をよく研究している結果だろう。
アメリカが上手く切り返し、チャンスボールをもらう。レフト側にいたキライがおそらくはオーディブル(声でのサイン)でライト側へ移動攻撃。ライトバックをアメリカが自分達で消しているのにソ連は、全く対応出来ない。バックはフェイクをかけて、Cワイドに跳んでいるのにソ連のミドルは中央で膝を曲げてしまう始末。


3:50 4-1になってソ連タイムアウトアメリカほとんどコート内で話すwwあんまり審判も厳しくなかったのだろうか。


4:28 4-1。ソ連もリードの上からクイックを狙うが、これはもうバックセンターのストブルトリックの位置取りが素晴らしい。ここにしか打てないもんな。アメリカがかなり先を行っている。
ラリーの最後のスパイクでも現代から見たら、何でミドルがそれに行けないと言いたくなるが、おそらく当時にしてはテンポも早いし、ソ連には自分の前のゾーンさえ守っておけば良い。みたいな染みついたものがあるのかもしれない。 


4:53 素敵なアングル。


4:58 5-1。ここに来てバックは相手ライト側へ。ストブルトリックのレシーブ、上手すぎます。
どんな攻撃にも2枚以上つけるアメリカ、とオープンさえも1枚になってしまうソ連の差は歴然とも言える。


5:30 6-1。もうソ連は何をしても決まらないという絶望感に苛まれていたのかもしれない。なにを血迷ったか、あまりに遅い単発クイック。そりゃ通りませんて。センターから高いトスならとか考えたんだろうか。


6:00 7-1。なんとかサイドアウトをとったソ連が半周もしないで2枚替え。やはりパルシン監督は昔からなんだ。


7:06 7-1。アメリカのライトバック。パワーズかも知れんが、おそらくティモンズ。ミドルの選手にオポ並みの攻撃力があったのだ。


7:30 7-1。アメリカのシャットアウトブロック。この時代、もうオーバーネットは関係ないのだが、それにしては、横映像を見ると、ブロックはあまり前に出ていない。もっと出ているものだと思ったが。


7:45 8-1。アメリカはサーブを良いところに打って、コミット。リードだけにこだわらない、柔軟なチーム作りが伺える。


とまぁ、ここで動画は終わってしまった。いやぁ、縦映像メインだとなかなか楽しめる。こういう映像がもっとのこっていればいいのだが。