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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

過去のオリンピック出場国決定方法を調べてみた




photo by FIVB

今日はいつも以上に、よっぽどこういった分野に興味がないとしんどい記事だと思います。ご承知おきを。


熾烈なヨーロッパ予選と比較的イージーな最終予選兼アジア予選を比べるうち、どんな歴史でこのような出場国決定方法になったのか、気になってきたので調べてみました。
結構いろんな紆余曲折がありました。そこにはおそらくバレーボール連盟内、各国協会間の政治的駆け引き、策略etcいろんなことがあったんだろうなということが容易に想像できます。
1964年大会からの五輪男子の出場国の決め方を正月の間ちょくちょく調べてみました。
ちなみに男女では決定方法や出場国も異なるためご承知おきください。ここに挙げたものはすべて男子大会のものです。

1964 東京 10か国

金:ソ連 銀:チェコスロバキア 銅:日本

開催国 日本
世界選手権1位 ソ連
世界選手権2位 チェコスロバキア
世界選手権3位 ルーマニア
ヨーロッパ ハンガリー 欧州選手権2位から繰り上げ
西ヨーロッパ オランダ 西ヨーロッパ予選
アメリカ大陸1位 ブラジル パンアメリカン大会
アメリカ大陸2位 アメリカ パンアメリカン大会
アフリカ モロッコ アフリカ予選。のちに辞退
アジア 韓国 アジア予選
繰り上げ ブルガリア 世界選手権4位

五輪でバレーボールが始まった1964東京大会は男子10チーム、女子6チームでした。
当時は大きな国際大会がほかには世界選手権くらいしかなかったため(ワールドカップはこの翌年から)、その結果が大きく反映されています。
アフリカ、アジアはまだ大陸選手権が開かれていなかったため、五輪予選を開いています。
アメリカ大陸は一つの大会で決めたようですが、北中米、南米というくくりがあったのかまではわかりません。当時はアメリカ大陸が一くくりにされていたのかもしれません。そもそも南米選手権、北中米選手権はまだなく、パンアメリカン大会だけがアメリカ大陸の大きな大会でした。
西ヨーロッパってどんなくくりだよと思いますが、当時は東ヨーロッパ全盛。今でいうアフリカと同様の扱いだったのかもしれません。それにしてもヨーロッパに内包されていて欧州選手権だって出てるのに、出場権与えるんじゃないよ。ちなみに当時のFIVB会長はフランス(西ヨーロッパ)人のリボウ氏。
この先結構続くのですが、辞退なりボイコットした国があったならその出場権で決めろよと思いますが、あっさり世界選手権の結果などから決めてしまうのですね。

1968 メキシコシティ 10か国

金:ソ連 銀:日本 銅:チェコスロバキア

開催国 メキシコ
前回五輪1位 ソ連
世界選手権1位 チェコスロバキア
世界選手権2位 ルーマニア のちに辞退
世界選手権3位 東ドイツ 4位から繰り上げ
ヨーロッパ ポーランド 欧州選手権3位から繰り上げ
アメリカ大陸1位 アメリカ パンアメリカン大会
アメリカ大陸2位 ブラジル パンアメリカン大会
アフリカ チュニジア アフリカ選手権、のちに辞退
アジア 日本 アジア大会
繰り上げ ブルガリア 世界選手権7位から繰り上げ
繰り上げ ベルギー 不明

前回五輪1位というのが昔はあったのですね。この後結構続きます。そういえば春高も以前は前年度優勝校枠がありましたね。
ベルギー、世界選手権でも欧州選手権でも大した成績収めてないのに何で出てるんや…。ちょっと調べてみよう。

1972 ミュンヘン 12か国

金:日本 銀:東ドイツ 銅:ソ連

開催国 ドイツ
前回五輪1位 ソ連
世界選手権1位 東ドイツ
世界選手権2位 ブルガリア
世界選手権3位 日本
ヨーロッパ チェコスロバキア 欧州選手権2位から繰り上げ
北中米 キューバ 北中米選手権
南米 ブラジル 南米選手権
アフリカ チュニジア アフリカ選手権
アジア 韓国 アジア予選
五輪予選1位 ポーランド
五輪予選2位 ルーマニア

この大会から男子は12か国参加に。増えた二つ分は五輪予選を開催。
予選はフランスで開かれています。結局敗退しますが母国を出場させたかったリボウ会長の思惑だったと邪推してしまいます。この予選の出場権まではちょっと調べられませんでした。
8月の頭にこの予選をやって、8月の終わりにはもう五輪開幕という強行スケジュールだったようです。
各大陸選手権が整備されたため、その優勝国がそのまま五輪出場を決めています。

1976 モントリオール 10か国

金:ポーランド 銀:ソ連 銅:キューバ

開催国 カナダ
前回五輪1位 日本
世界選手権1位 ポーランド
ヨーロッパ ソ連 欧州選手権
アジア 韓国 アジア選手権2位から繰り上げ
北中米 キューバ 北中米選手権
南米 ブラジル 南米選手権
アフリカ エジプト アフリカ予選
五輪予選1位 チェコスロバキア
五輪予選2位 イタリア

参加はまた10か国に。前回からは世界選手権2位3位がカットされました。
アフリカは政情不安からアフリカ選手権が行われなかったため予選を開催。
エジプトは結局棄権しました。

1980 モスクワ 10か国

金:ソ連 銀:ブルガリア 銅:ルーマニア

開催国 ソ連
前回五輪1位 ポーランド
世界選手権1位 イタリア 2位から繰り上げ
ヨーロッパ ユーゴスラビア 欧州選手権3位から繰り上げ
北中米 キューバ 北中米選手権
南米 ブラジル 南米選手権
アジア 中国 アジア選手権、のちに辞退
アフリカ チュニジア アフリカ選手権、のちに辞退
五輪予選1位 ブルガリア
五輪予選2位 ルーマニア
繰り上げ チェコスロバキア 五輪予選最上位
繰り上げ リビア アフリカ選手権2位

モスクワは東側諸国ボイコットで有名な大会ですが、実はアメリカは出場権すら持ってなかったのですね(五輪予選3位)。
日本も普通に出場できていなかったのですね。知りませんでした。
10チーム中7チームがヨーロッパというほぼヨーロッパ選手権という大会でした。

1984 ロスアンゼルス 10か国

金:アメリカ 銀:ブラジル 銅:イタリア

開催国 アメリカ
前回五輪1位 ソ連 のちに辞退
ワールドカップ1位 キューバ 2位から繰り上げ。のちに辞退
世界選手権1位 ブラジル 2位から繰り上げ
ヨーロッパ ポーランド 欧州選手権2位から繰り上げ
アジア 日本 アジア選手権
北中米 カナダ 北中米選手権2位から繰り上げ
南米 アルゼンチン 南米選手権
アフリカ エジプト アフリカ選手権
五輪予選1位 ブルガリア のちに辞退
繰り上げ イタリア 五輪予選2位
繰り上げ 中国 五輪予選3位
繰り上げ 韓国 五輪予選4位
繰り上げ チュニジア ワールドカップ最上位

ワールドカップ優勝国にも出場権が与えられるようになりました。
また東側のボイコットで出場国も大きく変化しました。

1988 ソウル 12か国

金:アメリカ 銀:ソ連 銅:アルゼンチン

開催国 韓国
前回五輪1位 アメリカ
ワールドカップ1位 ソ連 2位から繰り上げ
世界選手権1位 ブルガリア 3位から繰り上げ
一次五輪予選 アルゼンチン
アフリカ チュニジア アフリカ選手権
アジア 日本 アジア選手権
ヨーロッパ フランス 欧州選手権2位から繰り上げ
北中米 キューバ 北中米選手権、のちに辞退
南米 ブラジル 南米選手権
最終予選1 スウェーデン
最終予選2 オランダ
繰り上げ イタリア キューバ辞退に伴うそれぞれの最終予選2位間プレーオフ

新しい試みで大陸選手権の前に五輪予選しちゃおうということが行われています。当時は五輪前年に大きい大会がなかったという理由が大きいでしょう。
五輪出場権を持たない各大陸上位が参加してアルゼンチンが優勝しました。これの影響で今の「最終予選」という呼び方が出来たのではないでしょうか。別に今のシステムはそこまで「最終」感ないですからね。
この最後の繰り上げプレーオフの中国-イタリアがなかなかエキサイティングでホーム&アウェイ&中立地(スイス)という10日で3か国を巡るなかなかハードなスケジュールで最終的にイタリアが出場を決めました。


1992 バルセロナ 12か国

金:ブラジル 銀:オランダ 銅:アメリカ

開催国 スペイン
前回五輪1位 アメリカ
1989ワールドカップ1位 キューバ
世界選手権1位 イタリア
アフリカ アルジェリア アフリカ選手権
アジア 日本 アジア選手権
ヨーロッパ EUN 欧州選手権
南米 ブラジル 南米選手権
北中米 カナダ 北中米選手権3位から繰り上げ
1991ワールドカップ1位 韓国 5位から繰り上げ
最終予選1 フランス
最終予選2 オランダ

ワールドカップを五輪後の開催から五輪前の開催に変更したため、この大会は2大会のワールドカップ勝者に出場権がありました。


1996 アトランタ

金:オランダ 銀:イタリア 銅:ユーゴスラビア

開催国 アメリカ
ワールドカップ1位 イタリア
ワールドカップ2位 オランダ
ワールドカップ3位 ブラジル
アジア 韓国
北中米 キューバ
南米 アルゼンチン
アフリカ チュニジア
最終予選1 ブルガリア
最終予選2 ユーゴスラビア
最終予選3 ポーランド

この大会から前回五輪勝者、世界選手権勝者の出場権がなくなります。
ワールドカップが五輪前年になったため、ワールドカップが実質五輪予選大会になりました。
各大陸の代表を決めるのは、この大会の前まで大陸選手権の優勝国だったんですけど、別の大陸予選を開くようになりました。大陸選手権の優勝者はワールドカップ出て頑張ってねということです。
世界選手権の結果を反映させるのも悪くないと思うんですけどねー。たぶん予選やったほうが開催権みたいのでFIVBが儲かるんじゃないのかなぁと疑ってみたり。
この形式は基本的には2012年ロンドンまで続きます。最終予選がアジア予選共催になったりなどの変化はあるのですが、開催国1、ワールドカップ3、各大陸5、予選3というのは約10年続くことになります。


というわけで、シドニー、アテネ、北京、ロンドンは割愛します。
リオについては、
sputnik0829.hatenadiary.com
を参照ください。


過去の五輪出場国決定方法を見てきましたが、やっぱり今の決め方というのは少し釈然としないところがあります。
やはりそれは直近の大会結果よりランキングポイントの方が重視されているから、というのが大きいように思います。
もちろん長い間の積み重ねの方が重要なのですが、結局ランキングポイントというのは開催国というだけで出場ポイントがもらえるとか実力以外の要素の反映度合が大きいので、どうも怪しさが出てしまいます。じゃあ今から強くなろうという国は5,6年いい成績を続けないとその大陸予選にすら食い込めないわけです。
そんなこんなでカタールだとかスロベニアだとか新興国が割り食ってる感がどうも個人的にすんなり来ていないのだと思います。


じゃあ代案出せよ、といわれたら困ってしまうのですがね。