Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

きょうのセッターその48 マルセロ・エルガートン



www.youtube.com


リカルドが去ったブラジルの、ブルーノまでのつなぎのセッターという位置づけになってしまうのだろうが、マルセリーニョことマルセロ・エルガートンは、十分にレジェンドと呼ばれるに値する実績を残している。
リカルドがチームを後にしたのは2007年のこと。そのあとのワールドカップは優勝するが、2008年のワールドリーグ、北京オリンピックで優勝することはできなかった。


サイドに打たせる精度だけでいえば、マルセリーニョのほうが上だったかもしれない。ただセッターがリカルドからマルセロに変わったことで予測不可能性が失われてしまった。何をしてくるかわからない怖さがリカルドのいないブラジルには決定的に欠けてしまった。具体的にはミドルを使えるエリアが狭くなった事が挙げられる。対戦相手はリカルドのあらゆるところからミドルを使ってくるオフェンスに、結局最後まで的を絞れなかったのだ。


マルセリーニョが下手だという話ではない。リカルドほどではないにしても、ある程度広い範囲からミドルを使えるセッターだ。
あくまで推測であるが、リカルドがいないから負けたと言われたくはないという思いが、リスクを抑えたサイド中心のトス回しに終始してしまった原因ではないだろうか。


ジバがヨーロッパのクラブであまり大きな実績を上げられていないことに代表されるように、あの強かった頃のブラジルで、個体としての能力だけをもって「スペシャル」と呼べたのはセルジオ、グスタボ、ダンテぐらいなものだと思う。などと言うと少し語弊があるのだが、その他の選手が大したことないと言いたいわけではないので、そこはご留意願いたい。2000年代最高の選手は紛れもなくジバだ。


何が言いたいかっていうと、そもそもあの時代のブラジルの強さはリカルドの織りなす予測不可能性に立脚したものだった。ただ、それもスパイカーに突出した選手がいなかったからこそ出来たこととも言える。
これが例えば、あの時代で言えばスタンリーやミリュコビッチみたいな爆撃機みたいな選手がブラジルにいたら話は変わっていたと思う。やはりその選手にボールは集まるだろうし、大事なところでトスが上がって来ないとその選手もストレスを溜める。もしそんな選手がいたら、マルセロのほうがスタメンになっていてもおかしくない。
結局のところ、最強を誇った2000年代中盤のブラジルは個の能力が突出していたのではなく、ユニットとしての能力が抜群だったのだ。一人ひとりに役割があり、責任がある素敵なファミリーであった。
そんな中でマルセロも、相手がリカルドの予測不可能に振り回されている時に、アンデルソンと2枚替えで出てきて、シンプルなトス回しで逆に相手を混乱させたことが一度や二度ではない。


て、3分の2ぐらいリカルドの話をしてしまった気がするが、マルセロはブラジルリーグ5回勝ってるし、ギリシャ時代にもチャンピオンズリーグ上位にも進出しているなど、クラブの実績だけで言えばリカルドともどっこいだし、むしろマルセロの方が上だ。
そんなマルセロも昨年44歳で引退した。どちらかと言えばクレイジーに見えるブラジルのセッターが多い中、実に普通の人格の方に見えるので、指導者として戻ってきていただきたいなと思う。