Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

荻野サントリーが証明したこと



現行スタイルになって4回目の天皇杯を制したのは、Vリーグ開幕以来、堂々の8連勝となったサントリーだった。


サントリーはメンバーを固定せず、早め早めの選手交替、そこまで悪くなくても交替という近年まれに見る、本当の全員バレーというスタイルでここまで勝ちを重ねている。
現にこの決勝戦ではセカンドリベロを含めたすべてのベンチメンバーが試合に出場している。以前、パルシン監督も同様にメンバーを固定せずに選手交代を多く行う監督だったが、あれはミスをしたら選手を替えるという懲罰人事的な交替がほとんどであったので、あれとはまた趣が違う。リーグ戦で徐々にいろんな選手を使うということはあり得ても、勢いがものを言うトーナメントですらこのスタイルを貫くことには相当勇気がいることだと思う。


サントリーが証明したのは、プレミアリーグに進むほどの選手であれば、継続してチャンスを与えれば、どんな選手でも結果は出せるということだ*1
誰が昨年の成績から、この決勝戦に二木選手や佐別當選手が先発するなんて考えるだろうか。もちろん、直接的な要因は、彼らの絶え間ない努力が実ったということだろう。しかし、それは誰も特別扱いせず、経歴を白紙にして、全員を一斉にスタートラインに並べた荻野監督の戦略が大きいのかもしれない。


バレーボールの世界では、層の厚さが重要だといいつつも、基本的にはメンバーを固定して、その中での連携やコンビネーションを高めていくのがチーム作りの基本として定着しているところがある。「交代選手が活躍」なんて試合があってもせいぜい1、2人がいいとこだ。やはりメンバー固定すればするほど、試合に出ていないという不安から控え選手を使いにくくなる部分がある。そうやって結局はプレミアリーグに進んでも、ほとんど試合にも出られず、引退していく選手も多くいる。失礼な話だが、前述の二木選手や、佐別當選手もそうやって消えていくのもしれないという予感もあった。しかし、結局、彼らに足りないのは「試合に出る」ことだったのだ。


たしかにサントリーには固定できるだけのタレントがいないのかもしれない。それは粘り勝つという彼らのスタイルにも現れているようにも思う。だからこそ、ボロが出る前に早め早めの交代をしているのかもしれない。ただ、それは選手にとってもモチベーションを常に保てるという効果も生み出しているだろうし、今まで試合に出ていなかった選手でも、控えの選手がいつでも準備できているという安心感が思い切りのいいプレーを引き出している部分もあるだろう*2サントリーのすべての選手からは、試合に出る責任感や全員で戦っている一体感も感じられるように思う。
全員で戦う。
結果的にそれが、テオ選手の負担を軽くし、大砲としては今ひとつでも、6番打者として使えば超一流なテオ選手を見事にいかすことができている。


この采配を監督1年目の荻野ヘッドコーチがしているというのだから、驚きだ。
やはりそれには、彼自身が試合での経験こそが自分を一番成長させたという実感があるのかもしれない。高校からバレーを始めたにもかかわらず、大型サイドとして、若い時分からサントリーで試合に出た経験がこのような采配を彼にとらせているのかもしれない。


ぱっと見には小手先の戦術に見えるかもしれない。しかし、根底にあるのは荻野監督のすべての選手に対する絶大なる信頼にあるように思う。

*1:もちろん様々な条件が重なってのことだろうが

*2:米山に関しては替えの効かない部分もあるだろうが