隻腕のバレーボール選手
隻腕のスポーツ選手といえば、一番有名なのは野球のジム・アボットだろう。片手でノーヒットノーランというのは末恐ろしいことである。
サッカーであれば、1930年のワールドカップに優勝したエクトル・カストロがいる。手を使わないスポーツとはいえ、そこまで至る過程は生半可なものではなかっただろう。
バレーボールにも、彼らほどトップ中のトップと言えないものの、片腕のバレーボール選手がいる。
ポーランドの下部リーグのチーム、ヤスウォでキャプテンとしてプレーしていた23歳のヤクブ・プロカニン(Jakub Procanin)は昨年の7月に滑膜肉腫の再発により、左ひじから下を切断した。
もちろん今季はほとんどプレーする機会はなかったが、上の動画のように時折ピンチサーバーとしてコートに入っていたようだ。
バレーボールにおいて片腕がないということはあまりに大きいハンデだ。レシーブで手を組むことはできない。ブロックの範囲は大幅に狭まる。ジャンプもバックスイングが満足にできないのだから、高さは落ちる。
まずはバレーボールをあきらめずに続けようと思った彼の勇気に賛辞を贈りたい。ガンの治療の後、続けているというだけでも、そう簡単な話ではないだろう。そして転移の可能性が100%ないわけでもないと思う。
体格もよく、腕を切断する前は最高到達点は360cmあったという。もちろん下部リーグプレーしていたとはいえ、過去のプレーを見る限り1部(plusliga)でプレーできた可能性も十分感じさせる。
少なくともその夢はあきらめざるを得なかったろう。その傷心たるや察するに余りあるものだ。
上記リンクのインタビューを読む限り、今年、父親になったこともバレーを続けている大きなモチベーションのようだ。
昨年、ポーランドの代表監督ヘイネンが、twitterである募集をした。
Tak, mam kolejny medal... srebrny w Pucharze Świata. Ale dlaczego nie miałby należeć do kogoś z was? Prześlijcie mi swoje historie, a bohater tej z nich, która poruszy mnie najmocniej, otrzyma mój medal.
— Vital Heynen (@vitalheynen) 2019年10月18日
medalvitalny@gmail.com
Wasz trener,
Vital pic.twitter.com/d4aFK0BQDb
自身の物語を送ってくれた人の中から1人にワールドカップのメダルをあげたいと。
470通のストーリーの中でプロカネンの物語はヘイネンの心をとらえ、日本で行われたワールドカップの銀メダルは彼の首にかけられることになった。それは彼自身だけでなく、彼のチームメイトからも応募がされたそうだ。
彼は、来季はカテゴリーを落とし、4部のチームでプレーするという。
そこではもしかしたら、ピンチサーバーだけでなく前衛でプレーする彼もみられるかもしれない。
今年生まれたという彼の息子が、父のバレーボールしている姿をずっと覚えていられる年齢になるまで、プレーし続けてくれたらなと切に願う。
via Siatkówka. Jakub Procanin - niezwykła historia - Siatkówka