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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

小さいセッターがいる場合のブロックマネジメント



小さいセッターがチームにいる場合、それは単にその位置のブロックが弱くなるのみならず、チームのディフェンスに大きな影響を及ぼす。
そんな小さいブロッカーがいる場合、どのようにブレイクにつなげているか。トップレベルでは群を抜く低さの173㎝のセッター、マティアス・サンチェスがいるセスクやアルゼンチン代表*1の事例から見ていく。
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やはり小さいブロッカーといえば、セッターの場合がほとんどである。
セッターは国際レベルでは190㎝より低い、日本国内では180㎝より低ければ、小さいといわれることになるだろう。もちろんジャンプ力で低さを補える部分はあるが、結局長い踏み込みが必要だったり、守備範囲で劣る部分があるので、小さいということはどうしてもハンデになってしまう。



小さいブロッカーがいる場合、当然、対戦相手はその選手がいる場所から攻めることを基本的戦術としてくる。スパイカーはたとえ2枚ブロックがそろってもその高さのないブロッカーの上から打とうとするので、ディフェンスもそれに応じたシフトを余儀なくされる。


さらに、例えばミドルがBクイックに入る場合、基本的にミドルはライト側の攻撃とパイプもあるので、相手ミドルの真正面まで移動するわけではなく、少し近寄るのみに留め、ライト側のブロッカーとともにセットに合わせて反応する形がトップレベルでは一般的だ。もちろんコミットする場合は真正面まで移動するが。


しかし、小さいセッターはこの相手のBクイックに反応する動きを基本的には行わない(もしくは行えない)。高さが出ない分、対面であるレフト側のスパイカーに意識を100%持っていくし、結局ヘルプブロックをしても高さがでないからだ。その分、ミドルがよりBクイックをケアしなければならず、ライト側の攻撃やパイプに対する意識は低くならざるを得ない。つまり小さいセッターが前衛にいると、セッターのところだけでなく、そこのほころびからほとんどの攻撃に対して効果的な複数ブロックを準備ことができなくなってしまう。


サーブで攻める

このように小さいセッターが前衛にいる場合、正直致命的と言っていいほどブロックは機能しないのだが、それでもブレイクをとっていくためにはどうするか。結論から先に言ってしまうと、サーブで攻める以上の有効手段は見つからない。サーブで相手を崩して、スパイカーの選択肢を減らすこと。そもそもイージーなサーブでは、セッターのところから攻撃されて簡単にサイドアウトされるので、攻めない以外の選択肢はない。もちろんブロックに関係なくサーブで攻めるのは当たりまえだが、特にセッターが小さい場合はリスクを大きくとって打つべきだろう。


セスクでは、相手を崩した場合、セッターはブロックに参加せず、それ以外のブロッカーで複数ブロックを形成する。下のリンクの動画のように3枚ブロックに行ける場面でも行かないということだ。結局低いブロッカーが3枚ブロックしてもそこを利用されてブロックアウトされることも多いからだ。これは昔はブラジル代表なんかがよくしてたし、最近では日本でもやっているチームは多い。
https://youtu.be/GMuDBQbI-Sk?t=2652


ブロックスイッチ

レフト側のブロッカーと位置を変えることも多い。特に相手のオポジットが後衛の場合は、打点がネットからの距離があるので、通過点がそこまで高くない場合もある。ただ問題はトランジションが複雑になり、うまく攻撃ができない場合がある。セッターがレフト側でブロックを飛ぶ場合、後衛もリベロがバックライト、オポジットがバックレフトを守るケースもよく見られる。
セッターが真ん中でブロックするケースもそこそこある。

2枚替え

セッターが小さいチームはよく2枚替えを多用する。サンチェスがスタメンの場合、セスクでも、アルゼンチン代表でも2枚替えはほぼルーチンワークのように行われる。交代でブロッカーを使う場合は1ローテのみだが、2枚替えなら3ローテすべてその小さいセッターの前衛を回避することができる。



と、いろいろ挙げたが、結局最初に挙げたサーブで殴る、直接の解決策はこれしかない。
今年、173cmの中根を擁するジェイテクトが優勝したわけだが、ブロックの低さがそこまで取りざたされることがなかったのは、彼が前衛の時のサーバーに西田とカジィスキがいたからに他ならない(もちろん彼が毎回しっかりジャンプをして必要最低限のブロックは形成していたことには違いないが)。


セッターのブロックが高いに越したことはないが、ブロックの高さが絶対に必要な条件であれば、サンチェスがアルゼンチン代表に入ることはないし、中根のジェイテクトが優勝することもない。特に彼らのようなセッターはブロックで点が取れればいいという逃げ場もない。ハンデがあるからこそ、そのセットに懸ける覚悟は並大抵なものではない。やっぱり、セッターは高さではないのだ。

*1:サンチェスは来季はパナソニックにいたマウリシオが監督をするトゥールコワンに行くので、楽しみである。