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きょうのセッターその33 アントワーヌ・ブリザール



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ブリザールは2セット目14-17からコートイン(1時間1分くらいから)。1セット目も少し出るけど。


昨年のヨーロッパ選手権を見たあと、今年の正月の予選をフランスが勝ち抜いて東京に来ることはないと思った。お恥ずかしい話だが、正直言ってフランスは終わった、と思っていた。しかし、そんなチームを救ったのが今年26歳になったブリザールだ*1
フランスはチームとして倦怠期の状態に入っており、お互いにお互いを知りすぎた状態というべきか。トニウッティもこのスパイカーはここで上げても決まらないといった記憶を重視しすぎて、単調なセッティングになってしまう。単調になっても決まらないから、トリッキーに走ってスパイカーが打ち切れないという悪循環。


オリンピック大陸予選の準決勝スロベニア戦。トニウッティで2セットを失い、絶対絶命の状況からブリザールが出て逆転した。
前述の状態にブリザールが入ってくることによって、一旦すべてをリセットすることができた。先入観なしに、状況に応じた最適なセットをすることでスパイカーが生き生きとしだした。
特にミドルに息を吹き返させたことが大きい。トニウッティはあまりルゴフとシネニエズをあまり信用できていなかったが、ブリザールがシンプルにミドルを使うことで、彼らが自信を取り戻し、ブロックでも存在感を示し始め、相手ミドルも彼らを無視できなくなり、フランスのサイドの決定率も上がった。
極めつけは5セット目、ブリザールの3本連続のサービスエースで勝負を決めた。


この試合をくぐり抜け、決勝のドイツ戦はブリザールが先発し、ストレートの勝利で東京五輪の出場権を掴んだ。
ブリザールがいなければ、フランスは東京に来ることはできなかっただろう。かといってレギュラーを掴むかといえば、それはまた違う話。精度的にはトニウッティにはまだまだ及ばないし、ブリザールが上げたようにトニウッティもまたはじめみたいに先入観を捨てたセッティングができれば、フランスはまたもう一段強くなるのだ。


しかし、フランスにとっては待望のブロックが穴にならない大型セッターであるし、サーブも武器だ。
肘に載せるようなバックセットはトニウッティも得意だが、かなり前の方でボールとコンタクトするので、ブロッカーは判断しにくい。


20/21シーズンからはサンクトペテルブルグでプレーすることになるブリザール。ロシア代表の強化プロジェクトの一貫でもあるビッグクラブに招かれたブリザールに代表監督のサムエルボは何を期待したのだろう。少なくとも世界のトップセッターになる道のりを順調に歩んでいることに変わりはない。

*1:ルアティもだけど。