こんな時だし動画で名勝負でも見よう
1985 ワールドカップ アメリカ-ソ連
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まずは当時バレーボールをしていた青少年を一人残らず虜にしたアメリカの15番のカーチ・キライに震えろ。ミスターバレーボールといわれる理由に、説明は不要なことを理解するだろう。
サーブが弱い? そうだ、まだサーブは弱い時代だ。だがバージンズはこの試合、約180本のレセプションをした。サーブミスが少ないからこそ集中力が問われる我慢比べだ。その耐久戦に彼は勝利した。
サーブが弱いからこそ、ミドルの打数も多い。ソ連の3番サビンに刮目せよ。おじいちゃんかおばあちゃん(あなたの年齢によっては父母でもいいが)に「ソ連のバレーボール選手で覚えている選手いる?」と聞いてみろ。十中八九ザイツェフとサビンと答えるだろう。ドロホフって答えたおばあちゃんがいたら、もしかしたら昔追っかけしてたかもしれない。サビンの空中での余裕、冷静沈着さ、コースの幅広さは現代でも通用しうるだろう。
この試合、現代のスコアシステムであれば、おそよ9セット分を戦っている計算だ。その体力に敬意を示さざるを得ない。
1996 アトランタ五輪決勝 オランダ-イタリア
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画質はあんまりよくないけど、気にするな。そしてこの試合のピリピリした緊張感を感じろ。
1996年、それは大きな大会でリベロがいない最後の年。この試合はある意味、真の6vs6の争いの終着駅だ。両チーム合わせれば合計8人ものバレーボール殿堂入りしている選手がプレーしている(監督も含めて)。
フルセットまでもつれたこの試合には、無駄なラリーがほとんどない。攻撃できなくて相手に返すだけというプレーがほぼ存在しない。相手に返すボールはほぼすべて攻撃。つまり長いラリーがほとんど発現しない。ある意味、つまらない試合といわれかねない。
もちろんボールを落とさず長いラリーが展開されることは、バレーボールの魅力の大きな一つである。しかし、長いラリーはある意味、攻撃を決められないことの連続でもある。相手に付け入る隙を与えない、この試合はいわば野球でいえば息の詰まる0対0の投手戦なのだ。
2006 世界選手権準決勝 ブラジル-セルビア・モンテネグロ
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ただただ美しいバレーボールに酔いしれろ。
強いとか、勝ち負けだとかそんなことどうでもよくなる。ただずっと見ていたい。そんなことを思わせるチームは後にも先にもこのブラジルくらいだろう。動画だと、ボールがどこにセットされたか、しばしば見失う。普通に。
この時のセルビア・モンテネグロだって決して弱くない。ミリュコビッチ、二コラ・グルビッチがほぼピークで、数年ぶりにバーニャ・グルビッチが戻ってきてて。ゲリッチとブエビッチはちょっとくたびれた感じだったけど。スパイクだって57%決まってる。でもブラジルは67%も決めてるのだ。
これはもう、奇跡に近いよ。
2011/12 イタリアセリエA決勝 マチェラータ-トレンティーノ
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プライドのぶつかり合いを堪能しろ。これもちょっと画質がしんどいけど、そん時は5セット目verだけでも見よう。こっちのほうがちょっと綺麗だ。
このシーズンはカップの決勝もこの2チーム。勝ったのはトレンティーノ。レギュラーラウンドは1勝1敗。チャンピオンズリーグの準々決勝でも対戦したが、1勝1敗でゴールデンセットまでもつれトレンティーノが勝った。通常3~4試合先取の決勝を行うのが通例であるイタリアリーグであるが、この年はロンドン五輪の影響で一発勝負の決勝。このシーズン6回目の対戦となった。
この後、日本でも活躍、チームを優勝させた両雄、イゴール・オムルチェン、マテイ・カジースキがチームを引っ張る姿に注目しよう。
2016 リオ五輪準決勝 イタリア-アメリカ
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ザイツェフを崇めよ。
高度にバレーボールが組織化された昨今。トップチームにほとんど戦術差は見られず、その組織化されたプレーの精度の高さと継続時間が問われる。この試合、そのバトルでいえば完全にアメリカの勝利だ。粘り強いトータルディフェンス、どこから攻撃してくるかわからない継続的なオフェンス。ほとんどの統計評価でアメリカが上回っている(そもそも総得点でアメリカが上回っているので当然だが)。
ただそれをすべて無力化させるストロングサーブにアメリカは音を上げる。1セット目、4セット目、いずれのセットもほぼ獲得濃厚な局面からザイツェフのサーブに打ち砕かれた。洗練された組織を打ち破る個のサーブ。現代バレーボールを象徴する一戦である。