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バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

「オポジット≠いわゆるスーパーエース」



オポジット変異? - /ja あやつる YmrDhalmel
完璧なチームが存在しないように完璧なフォーメーションもまた存在しない。
先週末、サマーリーグ、大学リーグ、全日本紅白戦と様々なバレーボールイベントが開催されたわけだが、決して少なくはないチームが「オポジット≠いわゆるスーパーエース」という布陣を使用したようである。FC東京つくばユナイテッド中央大学日本体育大学筑波大学・・・どのチームもサーブレシーブの要を務めるアウトサイドヒッターを、オポジットに据えたようである*1

まずはじめに本文中で出てくる守備手、攻撃手という表現はあくまでサイドアタッカーの区分けとして使用している。攻撃手といってもサーブレシーブはするし、守備手でもスパイクは打つ。タイプわけするならどちら?という話。

オポジットスーパーエースを置かずに守備手を置く布陣の最たる目的は、攻撃力の低いローテーションを作らないところにある。攻撃力の高い選手でいわゆるレフト対角に組むことによって、どのローテーションでもどちらかの攻撃力の高い選手が前衛にいる状況を作っている。上場か前田、和井田か高橋、小林か袴谷、椿山か出来田、千々木か渡辺。どちらかをオポジットに置き、守備手をレフトポジションに置くと、上記の攻撃手達が前衛にいない攻撃力の低いローテーションが生まれてしまうという懸念があるのだろう。
あまりバックアタックを期待せず、常にセンターと前衛にいる攻撃手の2枚の攻撃を念頭に置いているということもできる。
歩観n普及 ポジションの決め方 [フォーメーション][SR][戦術]あたりの方がわかりやすいのかもしれない。
ちなみにFC東京や土曜日の日体大がフロントオーダーだったのは左利き(ライトの方が得意)の攻撃手がいるからであろう。

なぜこのオポジットに守備手という布陣は今、トップレベルの主流ではないのか?多くのトップレベルのチームはオポジットにはいわゆるスーパーエースを置き、もし守備手を入れるとしたら、セッターの隣に置いている。
たしかに20年前、トップレベルでもオポジットには守備手を置くチームが多かった。ただそれはリベロ的な役割を期待してという面もあったし、ライトがしっかりしていると大崩れがないという神話的なセオリーもあった。しかし、リベロ制度ができた近年ではかならずしもオポジットに守備手の存在が必要なわけではない。そもそも(知る限り)世界最古の「オポジット=いわゆるスーパーエース」のバックやティモンズをオポジットに配したのは、キライとストブルトリックの卓越した守備能力がもたらしたアイデアだろう。アウトサイドヒッターがある程度守備ができれば、オポジットにはより攻撃力の高い選手を置くという発想になるのは必然と言える。そしてリベロの登場でその布陣の正当性はいっそう強化された。
つまり現代では、オポジットに守備手という布陣は、アウトサイドヒッターが攻撃力と守備力を高いレベルで実現できないことに端を発している。
この二つのレベルがある程度保証できる選手が二人いれば、そもそも攻撃力の高い選手で対角を組むという必要はそもそもないのだ。ただプレミアリーグなどであれば高い攻撃力のある外国人をオポジットに配することができるので、守備が崩れてもある程度はオポジットでなんとかできる。そこまでアウトサイドヒッターの守備レベルを気にしなくてもいいのだろう。


特に大学レベルでオポジット≠いわゆるスーパーエース布陣は、最近増えてきたということでもない。粛々とその系譜は受け継がれている。峯村、金子、低学年時の三上、竹崎(急に記憶が怪しくなった。4年の時はリベロだったし・・・なんだこの記憶・・・)と近年のインカレ優勝校を見て、思い出せるだけでざっとこれだけいる。結局、清水がオポジットにいる布陣ではインカレは勝てなかった。お互い超のつくスパイカーがいないのであれば、守備手を入れている方が絶対に強い。

では、守備手を入れるとしたら、なぜオポジットなのか。
オポジットに守備手を置き、攻撃手に対角を組ますという考え方は、前述のように穴を作らない、欠点を埋めるという発想から来ている。
一方、セッターの隣に守備手を置く布陣は対角のあえてバランスを崩すことによって意図的に攻撃力の高いローテーションを作り出す。いわば、長所を伸ばす発想である。
バレーボールはサイドアウトを取り続ける限りは負けない。ただ逆にブレークしない限りは勝てない。負けないチームを作るのか、勝ちに行くチームを作るのか。どちらかではなく、要はバランスの問題である。マイナスを減らすのか、プラスを増やすのか。

短所をなくすことに注力するのは実に日本的とも言える。

*1:専修はちょっと意味合いが違うように思う