Stay Foolish

バレーボール(主に男子)をいろんな視点から見ていくブログ

1974年の男子全日本分析



正直、ミュンヘンで金メダルを獲ったチームのことをそこまでよく知らない。
もちろん断片的な映像はそれなりに見たことはあるし、選手個々人のエピソードは書物や伝聞から知っていることが多いが、この時代の一試合通しの映像というのがなかなかないので、どのような戦術だったのかとか、選手個々人のポジションとかよく知らないのである。


ほんとはミュンヘン五輪の伝説のブルガリア戦なり、東ドイツとの決勝なりを見たいのであるが、ないんだ、これが。
で、松平監督ではないのが残念であるが、ミュンヘンの2年後、1974年の世界選手権の日本-ポーランド戦のフル映像を見つけたので、いろいろ分析して見ていく。白黒だぜ。この世界選手権で優勝したのはポーランド。当時の世界選手権は決勝戦というものがなく、予選を勝ち上がった6チームによる総当たり戦。この試合は最終日のもので、日本が勝っていれば、優勝はソ連のものであった。

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日本のスタメンはサーブ順に西本、猫田、大古、小田、嶋岡、横田。

ミュンヘンから変わっているのは、森田→西本、深尾→西本といったところだろうか。


全体的に今のバレーボールと大きく違うのは、まずはサーブが全然違うけど、それは置いといて、相手のポーランドもそうだがレセプションをめちゃくちゃ直線的に返すこと。やはり当時重要だったのは、ネット際に返してコンビネーションを作ることだったのだと思う。ただその分、ネットに直接あたったり、セッターが窮屈になって結局攻撃できない、というレセプションも多いように思う。


ディフェンス面では、セッターが後衛ではバックセンターに位置どるのが大きな違いだろうか。これはやはりブロックがタッチに数えられる、というルールが大きいのだろう。ブロックタッチのあとはすぐトスを上げなければならないので、多くボールが飛んでくるバックセンターにセッターを置く必要があったのであろう。これは嶋岡選手が後衛でもバックセンターに入っているし、ポーランドも同様。やはりラリー中は2段攻撃できる選手が外側にいたほうがバックアタックにしろやりやすいのだろう。



少し見づらいが、6ローテ分のオフェンスパターンの図。
W型のレセプションフォーメーションが両チームとも基本。
前衛3枚時は、広く攻撃するよりはX攻撃、いわゆるセンターエリアの時間差を仕掛けることがほとんど。
主に攻撃するのはサイドアウトではクイックを多用するが、レセプションが乱れたとき、ラリー中は9横田、10大古の両レフトが中心、12嶋岡は打数はあまりない。
ポーランドはあまり選手の見分けがつかないので、割愛するがライトからの時間差多用するのは日本と同様。5番のボイトビッチがこの時間差をよく決めるんだ、これが。これに対して日本が全く対応できない。

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では時系列で気になるプレーをいくつか。

  • 2:14 小田さんのメガネ+相手の突いたレセプションがネットに返るのを日本選手はヘディングでしれっと叩き落そうとする。これ、練習してたのかなぁ。
  • 4:51 大古選手のクロススパイク。これは世界の大砲ですわ。
  • 8:21 日本は基本的に5番ボイトビッチの前にミドルを置く。なので、このローテはライト嶋岡選手が真ん中で飛んで、小田選手がライト側。この種のブロックスイッチを日本はよく使用している。
  • 13:58 ポーランドはバックセンターの選手が大きく前に出るフォーメーションをよく使うので、この奥に長いクイックがよく決まっていた。
  • 16:02 いや、ボイトビッチすごいわ。髪型に引っ張られてるところもあるけど、フェイっぽい。

 

  • 21:09 猫田氏は失点すると、だいたい手挙げてる。大丈夫の意味もすまんの意味も込めてるのだろうか。猫田氏はやっぱりネットに背を向けてあげるセットは素晴らしい。


キリがない気もするので、この辺にしとこう。
この試合は1セット目は日本がとるも、2セット目以降、やたら日本がブロックに当てだして、連続失点の場面が目立ち、3セット連取されてしまった。私には少し猫田氏の強情すぎる感がぬぐえなかった。ある意味スパイカーに託しているのだろうが、選択肢があまり多くない中で連続失点してるのにサイドスパイカーに託しきってしまう場面が多かったように感じた。かと言ってじゃあもっと分配したらよかったのかといわれるとなかなか難しいところで。せめてライト側の選手にもうちょっと攻撃力が欲しかったかなぁ、と現代からは思ってしまうだが、当時、敗因はどこに置かれていたのだろうか。