Russia 3 - Cuba 0, Bronze Medal Match | Flickr - Photo Sharing!
photo by George M. Groutas at flicker
私がバレーボールを見ている時に気を付けているポイントをまとめてみました。
もちろんバレーボールの見方は人の数だけありますし、人それぞれの楽しみ方があります。ここに書いてあることが全部正しいなんぞ口が裂けても言えませんし、趣味的な見方の範疇を出ません。
あくまで私家版であり自分のためにまとめた、という部分のほうが大きな記事ですので、その辺はご留意を。
1.フェイズを理解する
ラリーポイント制になったとはいえ、バレーボールがブレイクを相手より多く取らなければ勝てないスポーツに変わりはありません。サイドアウトとブレイクについて、今更ここでは解説しませんが、それぞれのチームが今どちらのフェイズなのかを理解しながら、ゲームを見ることをお勧めします。
どちらにサーブ権があるのか、という単純な話なのですが、サーブ権のある時のポイントは、レベルによって変わるでしょうが、ない時のポイントに比べて1.5倍から3倍近い価値があるといえるでしょう。
同じプレーでの得点、たとえばブロック一つとってもブレイクをとるブロックとサイドアウトをとるブロックでは全然価値が違うことになります。
ブレイクをするためにチームは何をしているのか、ブレイクをさせないためにどうサイドアウトしているのかという見方をすると、試合の分かれ目が見えてきます。
2.セッターの信頼度を読み解く
バレーボールではそのほとんどの攻撃がセッターから繰り出されるものです。セッターがそれぞれの局面でどこにセットするかは勝負の大きな分かれ目になります。
セッターはその時の状況やスパイカーの体勢、現在の得点といった諸条件によって、あげる場所を決断しているのですが、特に勝負所では「どのスパイカーを信頼しているか」がそれを決めるもっとも大きなファクターであると考えています。
信頼度とそのスパイカーの決定力はニアリーイコールではあるものの、全く同じではありません。調子、ミスをしない、ベテランである、仲が良い、勝負強いetc様々な要因でセッターの信頼度は日々、その日のゲームの中でも上下します。同じスパイカーでもフロントアタックよりバックアタックのほうが信頼できる、ライトにいるときは信頼できてもレフトにいるときは信頼できないといった諸条件もあるので、それを完璧に読み解くことは難しいです。たとえば、得点があまりに離れているケースや序盤などでは信頼度という指標はほとんど意味を持ちませんし。
この作業は突き詰めると、セッターの思考をトレースするということです。もしそのセッターの思考を完璧にトレースできたなら、次にどこにトスが上がるのか、おのずとわかってくるのではないでしょうか。
3.ディフェンスシステムに注目する
往々にしてオフェンスよりはサーブを含めたディフェンスシステムにこそ指導者の思想、哲学が色濃く反映されるように思います。
ボールから少し目を離して、どのような陣形でブロックやフロアディフェンスしているのかに注目し、そこにどのような意図があるのかを探るのも一つの楽しみ方でしょう。ミドルブロッカーはどれくらいコミットをするのか、サイドブロッカーはどの位置からスタートしているのか、バックセンターはどんなボールを待っているのか。高いトスに対して3枚行くのか、そのブロックはしっかり揃っているのか。
特に相手のレセプションからの攻撃に対するディフェンスに、注目してみましょう。
4.ラインナップを読み解く
各々のチームのラインナップにはほとんどの場合、そのラインナップにした理由があり、思惑があり、強調したい何か、もしくは隠したい何かがあります。
アウトサイドのどちらをセッターの隣に置くのか、なぜそのローテーションからスタートするのかといったものを子細に検討していくと、そのチームの形がおのずと浮き彫りになってきます。
そのあたりは以下のエントリに書いてるのですが、なにぶんもう5年も前の記事なので、見る側のフィルタとしての私の意見が変わっていたり、トレンドではない解説もありますので、ご承知を。
sputnik0829.hatenadiary.com
5.トランジションの動きに注目する
守から攻、攻から守に移り変わる速さにこそ、チームのプレーに対する意識の高低が最もよく表れます。
ブロックに跳んだ後、ディグした後、いかに早く攻撃態勢に移るか、いかに早くブロックフォローの位置に入ることができるか、相手にボールが返ったらいかに早く守備陣形を取れるかといった部分は、ボールばかり見ていては追うことができません。ボールも視界に入れつつ、少し視野を広げてみると見えてくるものがあると思います。
6.得点・失点の質を見極める
1点は1点なのですが、それぞれの得点・失点には質的な違いがあります。自分たちの思惑通りの攻撃で得点するケースもあれば、思わず得点できたラッキーなケースもあります。
相手のミスによる得点にしても、ミスを「出してくれた」のか、ラリーで苦しめてミスを「出させた」のかでは大きな違いがあります。それぞれの得点・失点の質を注意深く見ていくと、ゲームの先行きがおのずと見えてきます。
レベルの高いチームは、とられても仕様のない失点と、絶対にとられてはいけない点を区別しているように思います。相手の素晴らしいプレーにやられた失点だったら仕方ないですし、自分たちの約束ごとを守れず失点したケースや大チャンスを逃し、みすみす失点するケースもあります。それは点数が入った後の選手や監督の表情や仕草を見ればおのずと見えてくると思います。失点をうまくマネジメントできているチームは強いです。相手のあらゆるプレーに対応するのではなく、点にできるボールを狙ってそれをしっかり得点する、ある種の割り切りがバレーボールでは必要になります。
7.拠り所を推察する
どのチームにも必ず何らかの「拠り所」があります。自信の根拠と言い換えてもいいでしょうか。
それはエースの能力かもしれません、監督かもしれません、長い時間をかけて練習したブロックかもしれません、誰かのサーブかもしれません。
今まで残してきた「結果」かもしれませんし、練習量そのものの場合だってあります。やはりこの「拠り所」が多く、それに対する信頼が強いチームほど崩れにくい傾向があると思います。
これは個人個人の選手にも言えることで、やはりそれぞれの選手にそれぞれの拠り所があると思います。
それが何なのか、目を凝らしてみるとチームの形、選手の特徴はより色濃く見えてきます。
8.選択肢を広げるプレー、狭めるプレーを見つける
いかにして自分たちの選択肢を広げ、相手の選択肢を狭めるかというのは、バレーボールを有利に進める一つの大きな要素になります。
自分たちの選択肢を広げるプレーとしてはパスの時間の余裕、返す場所や、しっかり助走をさぼらないで攻撃の選択肢を増やすことなんかが挙げられます。
逆に相手の選択肢を狭めるプレーは、たとえば相手のセッターに返して攻撃の選択肢を減らしたり、広義にはなりますがいい位置でブロックを飛んでコースを限定することなんかも選択肢を狭めるプレーに入ってくると思います。攻撃は決まらなくても、相手の選択肢を狭めることができれば十分「有効」であったといえるでしょう。ブロックでもシャットアウトだけでなく選択肢を狭めるということも一つの重要な指標になりえます。
こういうプレーはなかなか数値化することは難しいので、見つけるのが難しい部分はあるのですがこういうプレーを意識しているチームは簡単に点を取られることが少ないように思います。
9.ラリーの優勢度を推し量る
ラリーのほとんどの局面においてそのラリーの優勢度が存在し、それが一人ひとりのボールタッチによって常に上下動していると考えることができます。
優勢度というとややこしい気がしますけど、言ってみれば得点期待値ですかね。たとえば、チームAがチャンスボールからの攻撃を行う場合、Aの優勢度は100点満点として80くらいでしょうか。それをチームBがいいブロックタッチをしたり、いいディフェンスをすることで、ラリーの優勢度が高まります。バレーボールは結局のところ、ネットを越えてくるボールを、それ以上の質でネットを越えさせることができれば絶対負けないスポーツです。
やはり強いチームというのは相手の状況がよい時でも、ラリーを続ける中で少しづつこの優勢度をあげていき、最終的にはラリーをとることができます。
互角に見えるラリーでも、いまどちらが優勢なのかを見極め、もしそれが覆ることがあるならそのキープレーは何だったのかを考えてみましょう。相手の嫌がるところに返したスパイクなのか、相手の強打をスパイカー4枚使えるところまで返したディグなのか、コートの外からスパイカーか十分な高さで打てるところまで持って行ったセットなのか、それに注目してみるのも面白いでしょう。
10.「モメンタム」を読み解く
バレーボールはよく「流れ」「モメンタム」のスポーツとも呼ばれます。とはいうもののこの流れというのは実態がよくわからないものでもあります。
私論ですがこの流れというのは、心の耐久度にポイントがあるように思っています。
単に気合だとかそういう話ではなくて、7に挙げたいわゆる「拠り所」が機能しないとき、流れはよく相手に移ります。また9に挙げた低い優勢度から押し切ったり、ミスで高い優勢度を台無しにしてしまうと、いわゆる流れ、ゲームの「モメンタム」が動くことがよくあるように思います。
何が言いたいのかってーと、流れってのは心の耐久度によるそれぞれの局面における優勢度だとおもうわけです。
詰まる所、バレーボールというのはいかに自分たちの心を折らず(折らせず)に相手の心を折っていくかというスポーツである気がしてなりません。
なかなか言葉にするのは難しくて、自分でも何言ってんだろうというのが結構あるのですが、もうちょっとうまくバレーボールが見られるように、上手く言葉にできるように、バレーボールというスポーツを愛でていきたいと思っています。