バレーボールの構造的変化と未来
FIVB,Picture of the Game - 2015より
お堅いタイトルしかおもいつかなかったけど、大したことは書いてません。
比較的最近の話であろうが、FIVBのサイトにおいて、『Picture of the Game - 2015』が公開された。
過去から現在に至る、一部の国際大会(ワールドリーグファイナル)のバレーボールの構造を比較分析した非常に興味深い資料である。
http://www.fivb.org/Photos/2015_Picture_of_the_Game_Report_Volleyball.pdf(PDF)
ラリー時間、ラリーが何本で終わったか、サーブ側、レシーブ側どちらが有利なのかといったバレーボールの基本的な構造にかかわる部分が分析されており、今後のルール改正などにも活かされる資料なのだと思う。
ビーチバレー版もあり、こちらはより詳細でビーチバレーの特性というものがわかってくる。
インドアの分析内容で特筆すべき事項は、まずサービスエラーやエースを除いた全ラリーのうち、1本のアタックで終わる割合がここ10年で約20%も減少していることである。
2006年 | 75% |
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2015年 | 52.22% |
すわなち男子はここ10年で、よりラリーが続くようになっているということである。
1ラリーあたりのボールタッチ平均回数も2006年の4.5回から近年は6.5回前後と約2回増えている。
しかしながら、よくわからないのはラリーの平均時間はたいして変化がないというところである。コメントでもその点については触れていて、プレーが速くなった、選手がよりテクニカルになっているという理由をあげている。リバウンドをとったり、軟打を打ったりして、再攻撃や相手を嫌がらせるアタックの選択肢が増えたということだろう。
また、サービス側サイドアウト側の得点対比もここ10年で変化を見せている。
2006年はサイドアウト側の得点をサービス側の得点で割った値が3だったのに対し、2015年は2になっている(2006年がちょっと異常値だったともいえるが)。この値というのは、大きいほどサイドアウト側が有利なことを示す。
10年スパンで見れば、ゆるやかにではあるが、サービス側が得点をとる確率が増している傾向にあり、ここ5年はほぼサイドアウト率67%前後を行き来する安定期に入っている。
これは大きなルール改正がない限りは、今後も大きな変動を見せないだろうと思う。サーブが強くなれば、4枚レセプションなりの手段がとられるし、そうなればまたサーブもより強く、よりいやらしいサーブを打つというせめぎあいが今後も見られるだろう。
サンプル数が少ない(おそらく各年10試合程度)なので、これが男子バレーボール全体の傾向と言えるかは微妙なところであるが、その10試合を見てみるとほとんどブレがないので、やはりここ10年で、全体としてサーブを含めたディフェンス力が向上しているといっても過言ではないだろう。
2項では女子のデータ(単年のみ)の分析も行われており、男子との対比を見てみるのも面白いだろう。
また第3項では、試合時間の不確定性に触れており、今後の試合形式について3つの提案をしている。
現状、3-0で終わる試合とフルセットまでもつれる試合では終わる時間に幅がありすぎ、TVへの販売などを考えたときにマイナス要素になるので、この点はFIVBも改善を図りたいと思っているのだ。
上記のようにバレーボールの構造的には安定期に入っているので(過去考えられた可能性として、サーブミスとエースばかりのゲームになって時間だけは短縮されるだろうというのもあったし)、こういった手段をとる時期と考えているのかもしれない。
A.11点9セットマッチにする
B.15点7セットマッチにする
C.15点3ユニットで1セットの3セットマッチにする
さて、どうなのだろう、これは。
FIVBとしては、時間短縮ももちろんだがタームを短くすることによって、より緊迫したゲーム展開を作り出したいという狙いもあるようだ。もちろんやってみないとわからないが、Aの場合5-0、Bなら4-0がストレート勝ちとなるが、確かになかなかそれは難しいように思う。
Cはちょっとわかりづらいので解説すると、15点ゲーム(3ゲーム目は少し短い)を2つとって初めて1セット。そしてそれを2セットとったほうの勝ち、というどちらかと言えばテニスに近いようなルールである。なかなか面白そうで試合の終盤まで大勢が決しないという利点はあるだろう。
どちらにしろこれらのルールが採用されると、バレーボールがよりセットスポーツとしての色合いを強め、今以上に「流れ」が重要になってくるように思う。
バレーボールの未来はどのように変化していくだろうか。